東洋医学2 弁証論治

東洋医学2 弁証論治

1 診断法

(1)四 診

望診、問診、問診、切診は疾病を診察する四種類の方法で、四診と言います。四診で得られた病歴と臨床症状に関する資料は、さらに進めて弁証を行う基礎となります。

疾病を診察する場合、望診、聞診、問診、切診はそれぞれの特徴を持ちますので「四診合参」(四種類の診断方法を一緒に参照すること)してこそはじめて病状を全面的、体系的に理解でき、疾病に対して正確に診断できるのです。

① 望診

望診は目で観察する診察方法で、主な内容は望神、望色、望形および望舌があります。

        1. 望神
          神は生命活動の総合的な現れです。普通、病人でも精神状態が良く、表情が自然で、眼光が輝き、反応が早く、検査に協力してくれるのは病状が軽いのを示しています。もし病人が精神状態が衰えて振わなく、表情がぼんやりし、目には張りがなくなり、反応が鈍く、甚だしくなると意識がはっきりしなくなり、検査に仇で協力できないのは病状が酷いのを示しています。
        2. 望色(色沢望診)
          人類の人種の異なることにより、皮膚の色も当然違います。また、同じ人種であっても、皮膚の色も少し差異があります。しかし、皮膚の色は自然で、つやつやしているのは正常に属します。例えば、中国の健康な人の皮膚の色は微黄で、紅潤を帯び、艶があります。病気になる色は、主として赤は熱を示し、蒼白で艶がないのは寒症或は血虚を示しみかんのような鮮やかな黄色いのは黄症を示し、青紫血瘀域は激しい痛みを示します。鼻じる、疾液、大便、号熱白帯などのような分泌物と排汲驚いうと、普通、白くて稀薄なのは虚、寒に属し、黄色くて粘桐します。
          望色は自然の光線の下で行います。というのは、電燈の光(特に色つきの電燈の光)は顔色の真実さを弁別することの邪魔になり、錯覚が起りやすいからです。
        3. 望形(形態望診)
          病人の体つきを診ます。太り具合はどうであるか、行住坐臥(ぎょうおうざが)の姿勢は畸型(きけい)があるかどうか、肢体の異常な運動があるかどうかを観察します。例えば、肥満型の多くは気虚で・疾湿があるのを示し、痩せ型は多くは火があるのを示し、半身不随は気血不足、経脈が閉阻(へいそく)されているのを示します。四肢播搦(ししばんじゃく)、後弓反張、口眼歪斜(しゃけい)、筋肉がぴくぴく動くのは陰血が虚になって、筋脈の営養が失われ、或は風邪入絡(風邪が経絡に入る)によるものです。
        4.  顔面診
          東洋医学では、顔面の各部に五臓の盛衰が反映すると考えます。顔面診は、顔面の各部に五臓を配当し、その部位に現われた色変などにより臓器・器官の病変を診断します。顔面診と記されています。
        5. 望診の例望診の例
      1. 望舌(舌診)
        舌診は望診における重要な内容の一つです。それは舌質(舌の本体)と舌苔ぜったい(舌の表面にくっついた苔のようなもの)の二つに分けて観察することです。臓腑、経絡、気・血・津液は舌と広く関連しているので、その病理変化は舌に相応的に現われます。よって、舌質と舌苔の色つき、形状、乾湿度、動くようすを観察することを通じて、病気の性質が判断できます。正常な舌象は古体の大きさがちょうどよく、薄赤い色で、思いのままに動け、舌の表面に頬粒の分布も均一で、薄くて湿度もほどよい白苔が附着しています。舌
      2. 舌診の例舌診の例

② 聞診

聞診は声音を聞くことと臭いを喚ぐことの二つの面を含みます。

      1. 声音を聞く声音を聞く
      2. 臭いを嗅ぐ
        病人の分泌物あるいは排泄物が生臭くて濁るのは実熱症に属し、ちょっとだけ臭いを帯びるのは虚寒症に属します。例えば、痰液が粘稠ねんちょうで、生臭いのは痰熱薀肺を示し、痰液が稀薄で、臭くないのは寒痰薀肺を示します。小便の色が濃く、量が少なく、生臭い臭いを帯びるのは勝胱湿熱を示します。小便の色が澄んでいて、量が多く、臭くないのは勝胱虚寒を示します。口臭があるのは多く胃腑に熱があるということです。

③ 問診

問診は病人およびその付添いのものに病歴を問うことで、これは病状を理解するための重要な診察方法の一つです。

まず念を入れて、病人の主な病痛を聞き、続いて発症の時間、経過、既往歴を聞きます。

それから病人の訴えを拠り所とし、弁症の要求によって、全体の角度から、目的をもって、体系的に尋ねます。もし再来の病人であれば施術を受けた後の反応を聞きます。

問診の内容は、多くの方面に及んでいますが、それは病状を知る重要な手立となります。

      1. 寒熱を問う
        寒熱とは悪寒と発熱を指します。
        発病の最初の段階で悪寒と発熱が同時にあるのは、外邪が皮膚や筋肉など体の表面を犯したことになります。悪寒が重くて発熱が軽いのは風寒に犯されています。逆に発熱が重くて悪寒が軽いのは風熱に犯されていることになります。
        単なる悪寒だけで発熱しないのは但寒不熱と言います。多くは陽気虚弱に属し、その寒は体内から生じたものです。もし外から襲ってきた寒邪が直接に臓騎にあたる場合、但寒不熱になることもあります。その時、病変の部位に寒象が現われます。例えば、胃胱部の冷え痛み、下利酒穀(下した糞便が澄んだ水のようで、未消化の食物の残浮を伴い、糞に臭いにおいがない)などが見られます。単なる発熱だけで、悪寒しないのは但熱不寒と言います。 壮熱とは高熱が持続して退かないことを言います。それは温熱の外邪に犯され、外邪が表から裏に入り、裏熱俄盛(裏熱が異常に盛ん)になることです。潮熱とは発熱が潮の満ち引きのように、毎日決まった時間に体温が上昇し、特に午後に熱が出ます。しかし、その熱がそれほど高くないのですが、体内から体外へ蒸発するような感覚があります。それで、また骨蒸潮熱とも言います。それは陰虚内熱の現われです。寒熱往来とは悪寒がするとき発熱せず、発熱するとき悪寒せず、寒熱の交替は一日一回の場合もり、二、三日で一回の場合もあります。その場合、マラリヤを疑います。
      2. 汗を問う
        皮膚や筋肉など体の表面が外邪に犯された場合、汗をかくものは風熱が表を襲ったということです。汗をかかないものは風寒が表を束ねたということです。いつも汗が自然と出て止まらない、それに加え少し運動するともっど汗が出るのは自汗と言います。その多くは、陽気虚弱、衛気不固く衛気が虚で、外表を固めることができない)の現われです。寝入ってから自覚なしに汗がでる、目が醒めるとすぐ止まるのは盗汗と言います。それは陰虚で、陽熱が盛んであることの現われです。重態に陥いた時、よく冷汗が出るのは陽気が絶えようとしている危ない徴候です。
      3. 飲食、味を問う
        口が渇いて飲みものを欲しがるのは裏熱症に属し、口が渇かない、あるいは口が乾いても飲みものを欲しがらないのは寒湿があることに属します。飲食に冷たいものを欲しがり、熱いものが嫌いなのは熱症に属します。熱いものを欲しがり、冷たいものが嫌いなのは寒症に属します。食欲不振、味覚が鈍く、胃腕部に膨満感があるのは牌胃虚弱に属します。暴飲暴食のあと、呑酸、暖腐(胃のなかの腐臭が口から排出)があって、食べものが嫌いなのは食滞に属します。口に粘くて、甘い感じがあるのは牌に湿熱があることに属し、口に苦い感じがあるのは肝胆火盛(肝胆の火が盛ん)に属します。
      4. 両便を問う
        便秘、あるいは便が乾燥してなかなか排出しにくいのは腸腑の実熱症に属します。老人、産婦、あるいは久しく病気にかかった後の便秘なら、多くは気虚、津液不足の虚症に属します。膿血便、裏急後重りきゅうごちょう(しぶり腹)のものは腸腑湿熱に属します。軟便、完穀不化(食べたままのものを便出)のものは牌胃ひい虚寒に属します。いつも明方に下痢するのは牌腎陽虚に属します。小便の色が黄色くて濃いのは実熱に属します。小便の色が澄んでいて量が多いのは虚寒に嘱します。小便の回数が多く、色が濃くて量が少ないのは腎と膜胱に湿熱が滑っているのを示しています。尿の回数が多く、色が澄んでいるのは腎と膜胱が虚寒であることを示します。尿閉、排尿困難は膜胱に湿熱が窟り、あるいは腎陽不足、または瘡血、結石によるものです。尿の量が少ないのは牌腎両虚、水湿内停(水湿が体内に停滞すること)の現われです。
      5. 痛みを問う
        疹痛は、もし外邪に犯され、経絡が閉塞されることによるもの、あるいは気滞、血瘀、蠣虫かいちゅう、滞、痰濁たんじょくが凝滞することによるものなら、実症に属し、その痛みは緒(押されると気持が悪い)です。もし気血不足、陰精き損(陰精が欠損される)、筋脈失養(筋脈の営蓑が失われること)によるものなら虚症に属し、その痛みは喜按(押されると気持が良い)です。暖めると痛みが軽減できるのは寒痛で、冷やすと痛みが軽減できるのは熱痛です。遊走性ゆうそうせいの痛みは多くは風邪入絡によるもので、痛みの場所が固定しているのは寒湿阻絡(経絡が寒湿にはばまれる)によるものです。発症したばかりの頭痛は多くは外邪によるもので、久しく病気にかかっさいの頭痛、そして、繰り返して発作するのは多くは瘀血が凝滞ぎたいし、あるいは痰濁上擾たんじょくじょうゆう(上の部位が痰濁に擾乱されること)によるものです。頭痛が長く治らないで、頭がからっばになるような感じがあると同時に目の前に暗くなる覚えがあり、視物不精を兼ねるのは気血不足、陰精戯き損によるものです。また、頭痛の異なる部位によって所属する経脈を判断することができます。後頭部の頭痛は太陽に属し、側頭部の頭痛は少陽に属し、前額痛は陽明に属し、頭頂部の痛みは厥陰に属します。痛みが横隔膜の上にあるのは多くは心・肺の疾病に属します。
        痛みが横隔膜の上にあるのは多くは心・肺の疾病に属します。
        痛みが中院にあるのは多くは脾・胃の疾病に属します。
        痛みが腰部あるいはお臍にあるのは多くは腎と衝脈しょうみゃく疾患があるのを示します。
        痛みがお臍の下の下腹部にあるのは多くは腎・膜胱・大腸・小腸の疾患を示します。
        痛みが胸脇きょうきょう部・季肋きろく部にあるのは多くは肝・胆の疾患を表わします。
      6. 睡眠を問う
        つねに寝つかれず、あるいは眠ってから目が醒めやすく、そのあとなかなか眠れない、あるいは熟睡せず、驚恐きょうきょうで、目が醒めやすいのはみな不眠に属します。不眠と同時にめまい、心悸を伴うのは多くは心脾両虚、血不養心(血が心を養わなくなること)に属します。心煩(胸中が暑苦しくてもだ苛立いらだつこと)による不眠、また眠ってから、夢が多く、驚恐で、目が醒めやすいのは多くは心火熾盛かしせい・かしじょうに属します。胃に嘈雑感そうざつかん(胃腹部の空腹感とも痛みともつかない不物快な感覚)があり、あるいはいっぱいに食べてから、寝入りに入られないのは胃気失和いきしつわ(胃気が失調になる)、心神不安に属します。自分でがまんできないほど、いつも眠りたいのは嘩陸と言います。頭がうとうとと、噂睡するのは疾湿内盛(体内の疾湿が盛んであること)に属します。精神倦怠で、頭がぼんやりし、うつらうつらしているのは心・腎陽虚に属します。昏睡で目を覚さないで、呼んでも答えなく、それと同時に熱象を兼ねるのは熱邪内陥(熱邪が体内に陥いる)、擾乱心神じょうらんしんしん(心神が擾されること)による昏迷の早期に属します。熱象がはっきりしないが、喉に痰鳴があり、舌苔ぜったいが厚くねっとりしているのは、心神が湿毒痰濁に覆われたことに属します。
      7. 月経、帯下こしけ・たいげを問う
        女性の病人に対して、弁症の必要によって、月経と帯下の状況を尋ねます。 また、もし結婚された女性に対して、妊娠とお産のことを聞く必要があります。ここでは月経と帯下の問診について簡単に紹介します。月経のサイクルが短かく、量が多く、色が濃く赤いのは多くは実熱症に属します。 サイクルが長く、量が少なく、色が普通より淡いのは虚寒症に属します。月経が来る前に、下腹部が張って痛く、その痛みが拒按で、月経の色が暗くて葉色で、血塊がまじているのは気滞血瘡(気の運行がスムーズにいかず・気が長時間滞ると血癖を引き起こす)の現われです。月経が来てから、下腹部が痛く、その痛みは喜按で、月経の色がうす赤く、量が少ないのは血虚の現われです。帯下が精薄で、色が白く、無臭で、あるいは腰のだるさと痛みを伴うのは脾腎陽虚、陰寒内盛に属します。帯下が粘稠で、色が黄色く悪臭を伴うのは湿熱下注(湿熱が下焦に注ぐ)に属します。女性が閉経したあと、ふたたび不規則的な陰道出血があり、あるいは白帯下、黄色帯下、膿性帯下および血性帯下を兼ねて見られるのは多くは湿毒が子宮に宿っているひどい病症に属します。

④切診

切診とは検者(医師など)の指先の触覚で、病人預言定の個所に触れ、押さえ・それによって、病状を知るの診察方法です。それは脈診と按診に分けられます。
ここでは整体で活用できる切診の基礎を簡単に紹介します。

      1. 脈診
        切脈の部位は手関節の後の椀骨動脈の持動を取ります。模骨茎状突起の部位を関部とし、関の前を寸部とし、関の後を尺部とします。脈診
        両手にそれぞれ三部があり、左手の寸、関、尺三部はそれぞれ心、肝、腎を診察し、右手の寸、関、尺三部はそれぞれ肝、脾、腎を診察します。両手にそれぞれ三部があり、左手の寸、関、尺三部はそれぞれ心、肝、腎を診察し、右手の寸、関、尺三部はそれぞれ肝、脾、腎を診察します。切脈する時、病人の手関節背側に柔らかいもの(脈枕)をしき・手の掌を上に向けこ 自然のまま力を入れないようにします。まず、中指で関部を決め、ついで自然に人差指で寸部に触れ、薬指で尺部に触れます。脈を取る指の圧迫度は軽取(軽く触れて取る)、中取(軽からず強からず、按じて取る)、留針強く押えて取る)の三種類に分けられます。普通、まず脈拍の部位の深さ、頻度、リズム、力の大きさおよび脈拍の形態などの一般の状況を念いりに体得し、それから、均等の力で寸、関、尺の三部をそれぞれ按じ、どの部位に特に異常な感じがあるかどうかをよく体験し、さらに異常な感じがある部位を押え、多方面から比較して、正確な鮎を求めます。正常な脈象は遠からず遅からず、脈拍数は一呼一吸(即ち一息)に4~5回です。拍動がゆるやかで力強く、落着いていて律動があります。次に主な異常な脈象およびその臨床の意義について紹介します。脈診促脈、結脈、代脈を総称して間欠脈と言います。
        脈象は病人の太り具合、運動状況、体質および気候などの影響によって相応的こ変わる可能性があります。その点について脈診をする時に注意をはらわなけれ;三なりません。正確に各種の脈象を弁別するには、長い間の臨床経験を重ねる必要があります。もし二種類、あるいは二種類以上の脈象が同時に一人の病人に現われたら(例えば、細数脈、況細脈、細弦脈など)、その場合、病人の全身の状況と結びついて、総合的にその臨床意義を分析すべきです。
      2. 経絡輪穴の按診
        臨床実践に証明されたように、ある疾病は関連のある経絡、あるいは肺兪穴に、圧痛、あるいははかの異常な反応が現われることがあります。例えば、肺の病症は中府穴に圧痛があり、あるいは肺兪穴に結節が現れます。肝の病症は肝兪穴と期門穴に圧痛があります。胃痛は胃愈穴と足三里に圧痛があります。腸癰(虫垂炎)は闌尾穴に圧痛があります。これらは診断ばかりでなく、特にツボ治療に対して重要な意義を持ちます。腹部の按診も切診の重要な内容に属します。腹部が張っていて、叩いて太鼓のような覚えで、もし小便がよく通るなら、気滞による膨満感です。腹部を押えて、ぶよぶよして、水ぶとりで、軽く叩いて波打つような覚えがあるのは、水が集まることによる膨満感です。腹中の塊りが硬く、推しても移らないのは、血瘀によるものです。塊りが柔らかく、ときには集まってきて、ときには散ってしまうのは気滞によるものです。左の下腹部を押えて、塊りが多いと同時に便秘を兼ねるのは多くは乾燥の便が体内に積っていることを示します。右の下腹部に痛みがあって、その痛みは拒按で、特に強く押えて急に手を離すと、痛みがひどくなるのは多くは気血瘀滞(気血が阻害され滞る)による腸癰です。
      3. 腹診
        腹診は、臓腑の病変を探る切診(触診)です。患者の足を伸ばして仰臥させ、検者の手掌・指腹を用いて、胸部から腹部に触れ、皮膚の温度、湿り気、潤い、ざらざら感などや圧痛、硬結、筋緊張、動博などを診ます。健康な人は、腹部全体が温かく、上腹部が平らで臍下がふっくらとし、適度の潤と弾力があります。『難経』十六難では、五臓の病変を診る腹診法として次のように述べています。
        「肝病は、臍の左に動気あり、これを按せば牢(かた)く、もしくは痛む。
        心病は、臍の上に動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む。
        脾病は、臍に当りて動気あり、これを接せば牢く、もしくは痛む。
        肺病は、臍の右に動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む。
        腎病は、臍の下に動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む。」腹診
      4. 切経
        切経とは、経絡を切診(触診)することです。経絡に沿って指頭もしくは指腹を用いて軽く擦過し、ときには少し力を加えて按圧します。皮膚や筋肉の状態を診て、異常のある経絡を診断する方法です。切経の部位は、前腕部や下腿部の要穴部分に行い、全身的には行いません。擦診は切経の一方法で、皮膚をつまみ、痛みの過敏性や抵抗の有無を診ます。痛みや抵抗が強い経絡は異常があると判断します。背診(候背)は、古来の切診の一方法で、腹診とあわせて「按腹・候背」と呼ばれました。背部は、内臓の病変が現われやすいところで、背診では、皮膚の状態、筋肉の緊張・隆起・陥下・硬絵などの有無と、望診で、皮膚の色つやや産毛、ホクロの状態までも診て、異常のある臓腑や経絡を診断します。 庄痛は、皮膚や筋肉を押圧した時の痺痛を言い、その押圧点を圧痛点と言います。圧痛点を経穴の異常変化として挺え、診断の根拠としたり治療点とします。押圧によって痛みが増す場合は「実」、心地よい場合は「虚」となります。硬結は、痛りです。硬絵も経穴の異常変化として捉えます。皮下または筋肉に、コリコリした固まりに触れることがあります。多くは圧痛を伴っています。硬結は局所で、筋肉の緊張のように広範囲にはありません。陥下は、凹みです。経脈上を押圧していくと張りのない凹みが診られます。陥下は「虚」で、臓腑・経絡の診断上の根拠となります。腹診図

2 弁証

(1)八綱弁証

八綱弁証(病証)とは、四診で得た病状などを総合的に分析し、病変部位(①病位)の深浅で表証と裏証に、疾病の性質(②病情)で寒証と熱証に、疾病過程(③病勢)における正気と邪気の盛衰で虚証と実証に、病気原因や治療法を弁証することです。表裏×寒熱×虚実で8通りになります。(図5)陰陽では、陽は表、熱、実を、陰は裏、寒、虚を統括します。

①病位

邪気が体表部から体内へと侵入した部位により病態が異なり、病位の違いにより表証、裏証、半表半裏証に分類されます。

      1. 表証
        身体の浅い部位を表位と言い、皮膚や皮下表層の組織群、四肢や頭部、肩背部に病があるときを表証と言います。発病初期に現れ、悪寒・発熱・頭痛・項強・腰背痛・四肢関節痛・脈浮などが代表的な症候です。
      2. 裏証
        身体の深い部位を裏位と言い、腸管や隣接する臓器類に病があるときを裏証と言います。発病後一定の経過を経てから現れ、悪熱・口渇・便秘・腹部膨満・腹痛・下痢・舌苔厚・脈沈などが代表的な症候です。
      3. 半表半裏
        半表半裏とは、表と裏の中間位で、横隔膜に隣接する臓器類に病があるときを半表半裏証という。病が表位を過ぎ責任に達しないときに現れ、往来寒熱・胸脇
        苦満・口苦・咽乾・眩牽・脈弦などが代表的な症候です。

②病情

      1. 寒熱
        寒熱は、体内の陰陽気が偏盛、偏衰することで生じる病情で、疾病の性質を寒
        と熱に分類します。
      2. 寒証
        自覚的には熱がある感じ、他覚的には熱く感じるもの熱と言い、発熱・煩操・顔は赤くほてる・大便秘結・小便は赤濁少量・口掲・舌苔黄・脈数などが代表的な症候です。

③病 勢

      1. 虚実
        虚実は、疾病の過程における邪気と正気の盛衰を言い、虚証と実証という異なった病態に分類します。虚実は体質とも関係があります。
      2. 虚証
        正気の不足を虚と言います。邪気に対する正気の抵抗力は低下し、正邪で闘争はく、疾病の後期、慢性病、正気を失った病証などを虚証と言います。骨肉がかばそい、胃腸が弱い、無気力な体質の人に多くみられます。症候は、呼吸や語勢が弱い・自汗・下痢・小便頻数・筋肉に弾力性がない・痛部を按じると軽快し喜ぶ(喜按)などで、脈状は濡・弱・微・虚などです。
      3. 実証
        邪気の冗進を実と言います。邪気も正気も旺盛で抵抗力も強いので、正邪は闘争します。疾病の初期・中期、および疾・食・水・血などの停滞による病証を実蓋と言います。体質的には骨肉がっしり型・語声が荒く強いなどで、症候は無汗・便秘・小便少数・筋肉に弾力性・痛部を按じると拒む(拒按)など、脈状は弦・洪・滑・実などです。

④陰陽

陰陽は、表裏・寒熱・虚実を統括総合します。病理の性質に基づいて、すべての疾病を陰陽に分類できます。

      1. 陰証
        生体反応が沈滞、減弱している状態を陰と言います。陰の一般的属性をもつ病証を陰証と言い、裏証、寒証、虚証があります。顔色蒼白・気分沈滞・活気がない・言葉が少ない・手足を縮める・悪寒や冷え・舌質は淡肝などの症候があり、脈状は遅・弱・細・微を示します。
      2. 陽証
        生体反応が発揚、増強している状態を陽と言います。陽の一般的属性をもつ病証を陽証と言い、表症・熱症・実証があります。顔色紅潮・気分高揚・活気がある・言葉が多い・手足を伸ばす・炎症・充血・発熱・舌質は紅が多などの症候があり、脈状は浮・数・滑・洪・実を示します。

(2)経絡弁証

経絡弁症は主に経絡の生理を基礎とし、経絡の病症を弁別することを目的とする弁証方法です。経脈はそれぞれの異なる循行ルートがあり、経気がのびやかに巡らせているかどうか、気血の盛衰はどうなっているかはみな経脈の循行ルートによく現われてきます。
十二経脈は臓腑と絡属の関係を持っているので、経脈の病変が臓腑に影響を及ぼすことができ、臓腑の病変も関係のある経脈に反映されます。だから、病変の部位と性質によって、どの経脈の病変に属するかを判断できるのです。

①十二経脈の病候

      • 手の太陰肺経の病候
        咳噺、喘息、喀血、咽喉の腫痛、胸部脹満、欠盆部(鎖骨上膚)、肩背部および上腕肢内側前線の痛み。
      • 手の陽明大陽経の病候
        鼻出血、鼻水、歯痛、咽喉の腰痛、頚部、肩部の前および上肢外側前縁の痛み、腸鳴、腹痛、下痢、あるいは赤と白の交った粘りけがある臭いものを下痢する。
      • 足の陽明胃経の病候
        腸鳴、腹脹、水腫、胃痛、嘔吐、鼻出血、口限盃斜、咽喉の腫痛、胸部、腹部および下肢外側の痛み、発熱、気の狂い。
      • 足の太陰牌経の病候
        曖気、嘔吐、胃痛、腹脹、大便稀薄、黄症、全身が重くて無力、舌根がこわばって痛い、大腿、膝内側の腫脹。
      • 手の少陰心経の病候
        心臓部位の痺痛・心博、胸脇痛、不眠、盗汗、咽喉の乾燥感、ロ渇、上腕内側の痛み、手掌の熱い感じ。
      • 手の太陽小腸経の病候
        難聴、黄症・咽喉痛、頼部の腫れ、下腹の脹痛、頻尿、肩部、上腕外側後縁の痛み。
      • 足の太陽勝胱経の病候
        排尿困難、遺尿・マラリヤ、目の痛み、風にあたると流涙、鼻つまり、鼻出血、頭痛、頚背部、腰部、殿部および下肢の後部の痛み。
      • 足の少陰腎経の病候
        遺尿、頻尿、遺精、インポテンツ・月経不順、噛息・喀血、舌の乾燥感、咽喉の腫癌、水腫、腰痛、背中と大腿内側の後縁の痛み、下肢無力、足裏の熱い感じ。
      • 手の厥陰心包経の病候
        臓部位の痺痛、心博、心煩、胸部苦悶感、顔色が赤く、版下の腫れ、上肢の痘攣、手掌の熱い感じ。
      • 手の少陽三焦経の病候
        腹脹、水腫、遺尿、排尿困難、難聴、耳鳴、目尻の痺痛、頼部の腫れ、咽喉の腫痛、耳後、肩、上腕、肘部外側の疹痛。
      • 足の少陽胆経の病侯
        頭痛、目尻の痺痛、顎痛、目のかすみ、口が苦い、欠盆部の腫痛、腋下痛、胸、季肋部、鼠径部および下肢外側の疼痛。
      • 足の厥陰肝経の病候
        腰痛、胸部膨満感、下腹痛、脱腸、頭頚痛、咽喉の乾燥感、嘔吐、遺尿、排尿困難、精神異常。

3 論治

中医学には「治病求本」という治則があります。病気には必ず症状をつくりだす本質があるということです。病気を治すためには、必ず病気の本質となるようなものを探らなければならないからです。そのために四診を基に弁証と論治を行うことが重要となります。
「論治」とは、弁証によって得た結論に基づいて、治療原則と具体的な治療法を決め、どのように処方するかを決定することです。

「弁証論治」の「論治」には、「治則」と「治法」があり、整体や按摩マッサージなど手技療法で活用されています。この場合、治則というより施則(施術原側)と表現した方が良いかもしれません。ここでは、「施則」を「治則」で通すこととします。
また、「弁証施治」という表現もありますが、「施治」には「治則」・「治法」・「処方」を含み、漢方薬の処方と鍼灸の治療で活用されています。

(1)治則

治則は実際の施術における重要な施術原則となりますが、「治病求本」、「補虚清美」、「陰陽調整」といった原則があります。

①治病求本

「治療は必ずその本に求める」という中医学の原則です。整体療法(療術)の場合は「施術は必ずその本に求める」と解釈します。
いずれにしろ、これは治療の基本原則で、「疾病の本証に対してまず治療をし、次いで標証に対して治療しなければならない」ということです。「本」は病の本質・根本のことで、この「本」に対して治療(施術)を行います。

「本」の対義語が「標」で、本に付随して現れた症状を指します。どんな症候に対しても実行するとなると、実際にはその症候の緩急(慢性・急性)があるので、そこでは「急なれば標を治し」という原則が優先されます0本証よりも標証を先に治療するということです。例えば、急にひどい頭痛(標)となった場合はその耐え難い痛みをまず対症療法的に治療し、その後に頭痛となった素因である臓腑経絡の不和(本)に対して治療を開始するわけです。急でなければ基本原則どうりに本治を目標とします。これは、漢方医の話であって、急性の場合は直ちに専門医の治療を勧めます。

②補虚瀉実

「虚を補い実を渡す」とは、「虚」に対しては「補法」、「実」に対しては瀉法」を用いなさいという原則です。

「虚」の場合、例えば気・血・津液の不足や、臓腑の失調により正気が不足した場合、その不足や失調に対して正気を補います。これが補法です。
「実」の場合、例えば外邪が体内に侵入したり、内因による病邪が臓腑・経絡に停滞して旺盛であるときは、邪気を取り除くために渡法を行います。

補虚瀉実は正確に行えば効果を得ることができますが、逆に、虚に対して瀉法、実に対して補法を行うと必要外に正気を損傷させたり症状を増悪させてしまいます。ですから、虚・実の弁証は正確に行わなければなりません。
実際の臨床では、虚と実が混じり合っている場合もあり、中医師(漢方医)や鍼灸師の先生は、患者の状態を見ながら「先濱補後、先補清後」を使い分けています。

③陰陽調整

陰陽のバランスが崩れると病に至ります。逆を言えば、陰陽の平衡を保てば健廉を維持することができます。
現代における東洋医学の究極的な目標は、人体が陰陽平衡を保持できる自然治重力の増強にあります。健康維持と未病の発見と対処です。
陰陽平衡が崩れると、仮にその人体が実証だとすると、陽気が強まると陽実とミり、熱が旺盛となります。そして、相対的に陰(血・津液)が弱まり陰虚になります。

この場合、陰陽の平衡を取り戻すために、強まった陽気を抑制させます。瀉するわけです。瀉すと熱の旺盛を食い止められます。
この時、瀉法をせずに陰虚となってしまったら滋陰(陰を滋養)として補法を行います。まだ陽盛がある場合はさらに瀉法によって陽気を抑えます。
陰盛→寒実→陽虚という流れの場合も、補法を行って陰陽を調整します。「補虚瀉実」」の原則は、比較的即効性がありますが、「陰陽調整」は時間をかけて効果を見なければなりませんが、陰陽調整は極めて重要な原則なのです。

(2)治 法

治法は、臨床場面で様々な病証・症状に対して用いられる実際の処方です。
現在の漢方や鍼灸の臨床ではあまり用いない方法も中にはありますが、中医学では、汗・吐・下・清・消・温・補・和の八法に分類されています。
八法をそれぞれ組み合わせる場合もありますが、どの方法も症候を的確に把握して証を立てて治法の選択をしなければ効果を得ることができません0反って、危険な状態を引き起こすこともあるので的確な判断と十分な注意が必要です。

① 八法

      1. 汗法
        汗法とは、停滞している身体の汗を出させる方法です。悪寒など風邪の侵入初期や頭痛に用います。発汗させることで表の邪気を裏に侵入させないようにします。この汗法は強すぎると正気を損なうため、極度に弱っている時は用いません。
      2. 吐法
        吐法とは、嘔吐させる方法です。食中毒の症候や、吐き気があっても吐けない時、また上焦や気道に疾濁(たんだく)が停滞しているときに用います。吐法も身体が虚弱している場合は正気を損傷するため用いません。
      3. 下法
        下法は、吐法とは逆に下らせる方法です。強制的に排便させます。中焦・下焦に寒邪・熱邪が停滞して便秘・腹満・腹水・腸梗塞などの症候があれば用います。場合によっては下法の後、その効果が持続してしまい正気を損なう恐れがあり、経過を見るなどの注意を要します。
      4. 清法
        晴法は、熱邪を「情熱」する方法です。熱を除去します。化膿性の炎症や機能が過克進して実熱、鬱熱が停滞している症候に用います。虚熱証や臓腑・気分・血分・営分に熱邪がある場合などで用いることができます、虚寒証や虚弱には用いません。
      5. 消法
        消法は、炎症による腫れ、牌肥大、肝肥大、リンパ結核などの腫脹を消散させる法で、血液循環や消化の促進作用があります。
      6. 温法
        温法は、「温陽去寒」する方法です。寒邪を取り去り、温めます。主に「裏寒証」に対して、灸、温灸、温熱性薬物を用い、手技療法では推傘手法を用います。物理療法でも対応できます。内因(陽気不足)によるものは、脾胃の機能を高め体力をつけ、消化不良・慢性の腹痛・下痢などの症候を改善させます。温法は熱証に対しては症状を助長させてしまうので用いません。
      7. 補法
        補法とは、気虚・陽虚・血虚・陰虚の虚証に対して行います。「虚すれば則ち之を補う」の原則に従い鍼灸・漢方を用いたり、薬膳や推舎手法を用いて正気を補います。
      8. 和法
        和法とは、調和を目的とした法です。ですから補法や漬法を用いません。「寒熱往来」、「胸脇苦満」などの症候に用いられます。

②手技療法

手技療法にも、補法と溶法があります。主な手法は、推舎手技を用います。弁証が決まると、論治がそれに対応することは前述しましたが、「治法」に基づき、推睾手法を施す「配穴」や手順を決めていきます。

      1. 寒証(冷証)の場合
        寒証は、身体の寒熱のバランスが崩れ、寒(冷)に偏っているので、陽気を補う必要があります。寒証には「温法」を施します。温法は、ゆっくり優しく、暖£るように行います。手順は、末梢から四肢を経て根幹へと方向性を保ち施術します。四肢には擦法(指擦法・掌擦法)、体幹には摩法を用います。
      2. 実証の場合
        実証は、身体の虚実のバランスが崩れ、気の通りが悪く痛みがあったり、気の流れが停滞しているので、気血の通りを良くする必要があります。実証には、「通法」 を施します。適法は、経脈や血管の流れに沿って、始めは末梢から根幹へ、終わりは根幹から末梢へと方向性を保ちます。摩法、推法・担法を順に用い、経脈や血管を刺激し気血の通りをよくします。
      3. 陰証の場合
        陰証は、陰陽のバランスが崩れ、気が不足しています。陰証には、「補法」を施します。補法は、ゆっくりと右に回転する方向性を保ちます。摩法や擦法を用い、気を補います。
      4. 虚証の場合
        虚証は、よくない気が溜まっていたり、病いの気が侵入しています。便秘などは代表的な例です。虚証には、「漬法」を施します。滅法は、強めに、速めに、行います。摩法・理法を用い、気を排出させます。
弁証論治 目次 経脈経穴