解剖生理学8 神経系

解剖生理学8 神経系

1 神経系

(1)神経系の器官

神経系のおもな構成は、神経元である神経細胞(ニューロンNeuron)と神経膠細胞(グリアGlia)であり、ニューロンは神経インパルスを伝導し、グリアはニューロンを支配します。

ニューロンは神経細胞体と呼ばれる主要部分と、樹状突起と呼ばれる1つまたは複数の神経突起、軸索と呼ばれる1本の長い突起からなります。神経細胞体の集まっている部を(灰白質)、突起の集合している部を(白質)と言います。

神経膠細胞は神経の支持組織で神経の栄養と代謝を助けます。興奮を神経細胞体に伝えるのは樹状突起で、神経細胞体から終末の方に伝えるのは軸索です。これらの突起が網目のように連絡しあって身体各部の器官に分布し、その機能を有機的に調整・統一しています。

この神経系を形態学的に分類すると、①中枢神経系と②末梢神経系に分けられます。

また、神経系を機能的に分類すると、体の外部の環境に応ずる③脳脊髄神経系(動物神経系=体性神経系)と、体の内部の活動すなわち体の生命に直接関係する④自律神経系(植物神経系=内臓神経系)に分けられます。

①中枢神経系

中枢神経系(Centralnervoussystem)は、身体の正中線上あるいは中心部(中枢)に位置し、脳と脊髄からなります。身体中のすべての情報が末梢神経を通って集まり、これに判断を下し、適切な興奮を遠心性線維を経て効果器に送ります。この場合に意識を伴わない興奮の伝わる過程を反射と呼び、その経路を反射弓と言います。脳と脊髄は髄膜という保護膜によって覆われています。

②末梢神経

末梢神経系(Peripheralnervoussystem)は、身体を支配している神経で、脳神経と脊髄神経があります。身体の外表部や末梢部、いわゆる、皮膚・粘膜・筋・腱・関節・骨・内臓などの受容器からの興奮を求心性線維によって脳や脊髄に運ぶ働きをします。また中枢からの興奮を、遠心性線推を通って腺の分泌や筋の収縮などを司る効果器に伝えます。

③脳脊髄神経系

脳や脊髄と身体各部をつなぐ神経が末梢神経であり、これには脳神経(Cranialnerve)と脊髄神経(Spinalnerve)があります。脳脊髄神経には中枢も末梢もあり、刺激に対して反応を起こす神経系で、皮膚(汗腺を除く)や骨格筋に分布し、感覚・運動・知的な活動を行います。

④自律神経系

自律神経系(Autonomicnervoussystem)は、体内の活動に関与する不随意運動神経系で、中枢神経も末梢神経もあります。不随意機能である心拍数、胃腸の収縮や消化・吸収、排泄、循環、腺組織からの分泌、生殖および瞳孔などの調整を行い、体の内部にエネルギーを蓄積しようと働く副交感神経系と、体の内部から外部にエネルギーを発散させるように働く交感神経系の2種に区別されます。これらが協調して生命維持に重要な機能を果たしています。

2 脳

(1)脳の区分

脳(Brain)は、身体の中でも最も大きな器官の1つです。脳の区分は下方から上方に向かって①脳幹(②延髄と③橋と④中脳)、⑤小脳、⑥間脳(⑦視床下部と⑧視床)、⑨大脳からなります。脳は、軟膜・クモ膜・硬膜と呼ばれる3枚の髄膜に包まれ、頭蓋腔に収まつています。

脳表面に接して軟膜があり、その外層にクモ膜があります。軟膜とクモ膜との間をクモ膜下腔と呼び、血管と脳脊髄液によって満たされています。このため脳は水のなかに浮いた状態になっていて、さらに表面を厚い硬膜が取り巻いた状態で保護されています。

脳は神経細胞の集まった灰白質と、神経線維の走る白質の部分からなっています。また中枢神経系内の白質中に神経細胞の集まりがあり、これを核(神経核)と言います。

これに対して末梢における神経細胞の集団を神経節と言います。

脳は、形態学的に、また構造上にも差異が著明で種々に分類され、前述した分類のほか個体発生を基にした分類では、髄脳(延髄)・後脳・中脳・間脳・終脳(大脳)に分けられることもあります。

脳

延髄は、脊髄のつづきであり上方に後脳が続きます。後脳は腹側に橋があり、これは延髄の延長で背後に小脳があります。延髄と後脳を含めて菱脳と呼びます。後脳の続きが中脳で、上方に間脳、さらにいちばん先端にはよく発達した終脳があります。終脳は左右の大脳半球からなります。大脳とは狭義では終脳に相当し、広義では中脳・間脳・終脳を含めて言います。日本人成人の脳の重さは男性で平均1,370g、女性で平均1,220g程度です。

①脳幹

脳幹(Brainstem)は、延髄・橋・中脳からなります。

②延髄

延髄(Medulloaoblongata)は、脳の最下部で脊髄の上部に続く部分です。腹側に錐体状に少しふくらんだ錐体があります。この部は錐体路の線維が集まったもので、延髄下端で大部分は交叉(錐体交叉)します。その他の部位には生命保持(呼吸・循環・嘔吐・嘩下運動・発声・唾液分泌・味覚など)に重要な中枢(反射中枢)があります。中枢からのインパルスが心拍数、呼吸数、血管の太さを調整するので生命中枢とも言われます。

③橋

橋(Pons)は、後脳の腹側部にあり、三叉神経・外転神経などが出ています。橋の内部には脳神経(外転神経・顔面神経・三叉神経・内耳神経など)の核が多数存在します。

④中脳

中脳(Midbrain)は、橋と間脳の間にあり、中心部に中脳水道と呼ばれる脳室があります。背側を中脳蓋と呼び,上丘(視覚性反射に関係する)と下丘(聴覚の伝導路の中継点)などからなります。大脳脚と中脳蓋の間を中脳被蓋と呼び、赤核・黒質などの錐体外路の線維の中継および脳神経の運動核(動眼・滑車神経)などがあります。腹側は大脳脚と言って、錐体路と錐体外路などを含む縦走する下行性線維からなります。

⑤小脳

小脳(Cerebellum)は、橋の背側にあり小脳脚と呼ばれる線維によって脳幹と結合されています。前庭や深部知覚(筋紡錘・腱紡錘など)の興奮が小脳に入り、身体の平衡や筋緊張の維持を図ります。また、大脳皮質から橋を経て小脳に線維が入り、微妙な体運動機能の調整を行っています。小脳に腫瘍ができると、・バランスを失い転倒しやすく、千鳥足のように歩行します。筋肉を正常に協調させることができないためです。

⑥間脳

間脳(Diencephalon)は、上方の大脳と下方の中脳の間にあって生命維持に関して重要な役割をします。視床は、視床下部と視床(視床脳)からなります。1

⑦視床下部

視床下部(Hypothalamus)は、視床のすぐ下に位置し、自律神経系の機能を調節する中枢(体温・体内水分・血糖調節中枢など)として、また内分泌系を制御したり本能的な感情(渇き・空腹・不安・情行動など)に関係します。このように視床下部は身体のあらゆる細胞の機能を間接的に調整します。

⑧視床

視床(Thalamus)は、視床下部の上に位置し、視床上部・背側視床・腹側視床からなります。視床のニューロンは身体の感覚器からのインパルスを大脳皮質に中継し、感覚の発生に関係します。視床上部は、嗅覚に関係した大脳辺縁系と、性腺の発育を抑制し生活のりズムを調節する松果体があります。背側視床は、末梢から大脳皮質へいく嗅覚を除く知覚性神経線推の中継点です。例えば、視覚についての中継点に外側膝状体があり、視索からの線推を受けます。また内側膝状体は下丘からの線維を受け、大脳皮質に投射する聴覚の中継点になります。腹側視床は、人では退化の傾向ですが、錐体外路系線維の中継点になります。

⑨大脳(終脳)

大脳(Cerebrum)は、脳では最大で、最も上方に位置し、多くの隆起とみぞがあります。みぞは溝(こう)と呼ばれ、最も深い溝は裂(れつ)と呼ばれ、大脳縦裂は大脳を左右に半分します。このため大脳は大脳半球とも呼ばれます。左右の半球はそれぞれ独立した構造ですが、正中下部にある脳梁で両者を連結しています。

大脳は、元来嗅覚のためにできたものです、知覚中枢(痛覚・触覚・聴覚・視覚など)として発達し、人間ではさらに大きくなって高等な精神活動の中枢となりました。もちろんこれらの知覚と連絡し、随意運動の命令を下す中枢もこの部位にあります。

大脳は、外方を取り囲む外套と内部の大脳核および嗅脳からなります。外套は、表層に神経細胞のある大脳皮質(灰白質)と、内部にある神経線維の走る大脳髄質(白質)とからなり、左右の大脳半球は脳梁(白質)で結ばれています。髄質内に神経細胞の集団である大脳核があります。

大脳の表面は中心溝(ローランド溝)、外側溝(シルビウス溝)、頭頂後頭溝があり、大脳皮質を前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉および島に区分し、各種の中枢があります。

前頭葉の後部に運動領と呼ばれる運動を支配する中枢があります。この運動領(野)でとくに中心前回は、錐体路のおもな起始であり、大部分は反対側の骨格筋に分布します。運動領(野)のすぐ後ろの頭頂葉の前部に知覚領(野)があり、表在性知覚(痛覚・触覚・温度覚)と深部知覚(圧覚・筋覚)に対する体知覚中枢になります。

そのほか側頭葉に聴覚中枢、後頭莱に視覚中枢があります。味覚中枢と嗅覚中枢は、側頭葉の内側下面にあります。また、これらの運動中枢や種々の感覚中枢以外の新皮質は、総合中枢(連合領)で、人間では著しく発達し精神の集中・概念の形成・本能的活動への調節など精神的な人格に結びついた機能があります。

髄質(白質)は、同側の大脳皮質を連絡する連合線維、左右の大脳半球を連絡する交連線維、大脳半球と下位脳(中脳・菱脳)、および脊髄を結ぶ投射線維が走っています。特にこの投射線維の中の運動性伝導路に、錐体路と錐体外路とがあります。錐体外路は骨格筋の収縮や弛緩を無意識に調節する経路で中枢神経系内の全域にみられます。錐体路は、随意運動に関係する線維です。大脳皮質の運動領(野)から起こり反対側の運動性の脳神経

核または脊髄前角に達し骨格筋に分布します。この線維は内包(内側の視床および尾状核、外側のレンズ核との間をいう)と呼ばれるところを走ります。この部位は出血が多く、これによって反対側の麻します。

大脳髄質内には、大脳核(大脳基底核・終脳核)と呼ばれる数個の神経細胞の集団があります。大脳核の機能は、意識によらない運動や姿勢の維持に不可欠です。パーキンソン病は大脳核の病気で、筋の緊張が亢進じ運動の減少が起こり振戦と呼ばれる震えが見られるので振戦麻痺とも呼ばれます。舞踏病は筋緊張が減退し運動の亢進が起こります。

大脳のニューロンは単独では機能せず、他の脳部位や脊髄に存在する膨大な数のニューロンと協同して機能します。これらのニューロンは大脳ニューロンに絶え間なくインパルスを送り、大脳ニューロンからのインパルスも絶え間なく他の部位に伝達しています。他のすべてのニューロンが機能しても、大脳が機能しなければ、ものを考えたり意志を持てなかったり、記憶もなく、計画や実行もできなくなります。喜びや悲しみなどの感情も失います。

ニューロンは傷害によって死滅します。例えば、脳血管発作による大脳運動野ニューロンの消滅です。脳血管からの出血あるいは脳血管の血流停止により、脳血管発作が起こった部位とは反対側の身体の一部を意識的に動かすことができなくなります。これが脳卒中です。

(2)脳室と髄液

①脳室

脳室(Cerebralventricle)は、脳の内部のところどころに不規則にある4個の部屋で、髄液によって満たされています。左右の大脳半球のなかに側脳室があり、間脳には第3脳室があります。また中脳に中脳水道があり、菱脳には第4脳室があります。各脳室は、それぞれ交通しています。側脳室は室間孔によって第3脳室と連絡し、第3脳室と第4脳室の間には細い管の中脳水道があって連絡します。第4脳室は第4脳室正中口と第4脳室外側口によってクモ膜下腔と交通しています。

②髄液(脳脊髄液)

髄液(Cerebrospinalfluid)は、脳室の壁にある脈絡叢から分泌される(とくに側脳室の脈絡叢)無色透明の液で、脳室と脊髄の中心’管を満たしています。

脈絡叢(Choroid.plexus)と呼ばれる脳の毛細血管のネットワークは、血液を濾過することによって絶え間なく脳脊髄液を生産し、脳室に送り込んでいます。

脳室内の髄液は、側脳室を出て第3脳室に至り、下降して中脳水道を通過して第4脳室に流れます。髄液の大部分は第4脳室を抜けて、小脳付近のクモ膜下腔へと流出します。それからゆっくりと髄膜のクモ膜下腔を下降し脊髄を巡り、さらに上行して脳を巡った後、脳の静脈へ戻ります。

脳腫瘍が中脳水道を圧迫していると、髄液が血液に戻る道が塞がれ、液体が脳室あるい

は髄膜に溜まり、水頭症(Hydrocephalus)を引き起こします。

③髄膜(脳脊髄膜)

髄膜(Meninge)は、液体に満ちた強靱な膜.で、圧力に弱いニューロンを守っています。髄膜は、脳と脊髄の表面を包み、これを保護し、軟膜・クモ膜・硬膜の3層からなります。軟膜は、脳と脊髄の表面を直接に包んでいます。硬膜は、頭蓋腔で頭蓋骨に接して骨膜と融合しています。クモ膜は軟膜と硬膜との間にあります。軟膜とクモ膜の間をクモ膜下腔と言います。また、クモ膜下腔には多数の血管が走っています。この血管が破れるとクモ膜下出血を起こします。

3 脊髄

(1)脊髄

脊髄(Spinal)は、脊柱管のなかを走る長さ40〜45cmの白い軟らかい器官です。上は延髄に続き、下端は細くなり、第2腰椎の高さで急に細い終糸となります。終糸の周りに多数の脊髄神経が束をつくっています。これを馬尾と言います。部位によって頸髄・胸髄・腰髄・仙髄・尾髄に分けます。脊髄は、頸部と腰部で太くなり、頸膨大・腰膨大を作ります。これは、上肢・下肢に神経線維を送る神経細胞がとくに多いためです。

脊髄の内部は中心に中心管があり、表層の白質と内部(H状)の灰白質(ニューロンの樹状突起と細胞体)からできています。灰白質は前後に一対の前角(前柱)と、後角(後柱)が突出しています。

前角は、運動性の前角細胞が集まり、後角には知覚性の神経細胞が集まっています。なお胸髄と腰髄には側角があり、交感神経の細胞が集まっていて、仙髄の側角には副交感神経の細胞が集まっています。

白質の腹側は前索、背側は後索、外側は側索と呼ばれ、いずれも上行性伝導路(上行路=脳に至る方向のインパルスを伝える)、下行性伝導路(下行路=脳を出て脊髄を下る方向のインパルスを伝える)の神経線推が走っています。

(2)脊髄の機能

脊髄の白質を伝導路(上行性・下行性)が走り、灰白質(前角・後角)から31対の脊髄神経が出ています。

また胸髄および上位腰髄の側角(交感神経)と仙髄の側角.(副交感神経)からは自律神経が出ています。このほか脊髄には、多くの反射中枢があります。例えば、随意筋に関係するものとして、屈筋反射・伸展反射(手が熱いものに触れると瞬間に手を引く)などがあります。また内臓反射としては、腰・仙髄に排便、排尿、分娩、射精、勃起などがあります。

脊髄の全面にわたり傷害があると、傷害位置より下方で発生したインパルスは脳に伝達

されず、脳からのインパルスも傷害位置より下方に伝達されないため無感覚症や麻痺が起こります。

4 神経の伝導路

(1)伝導路

伝導路(Ti-act)は、中枢神経系における軸索の束です。軸索とは神経繊維のことです。神経は末梢の軸索の集合体で、細い繊維が束になって太い綱になったようなものです。

末梢からの興奮(インパルス)を中枢に、中枢からの興奮を末梢に伝達するためには数個の神経元(ニューロン)が連絡しています。伝導路は、この神経元の連絡を行います。言い換えれば、脊髄や脳から出る神経を、電気的なインパルスが駆けめぐるルート(路)が伝導路です。伝導路には、①上行性伝導路(知覚性)と②下行性伝導路(運動性)があります。

①上行性伝導路(求心性伝導路)代りへ

末梢の受容器からの興奮を中枢に伝えるもので、皮膚知覚・深部知覚・嗅覚・視覚・聴覚・味覚などの伝導路があります。

皮膚知覚路は、皮膚の触覚・圧覚・痛覚・温覚を伝達する伝導路です。知覚神経の線維は、後根から脊髄の後角(第1神経元)に入ります。後角の細胞から発した神経線維は、反対側の側索を上行し視床(第2神経元=脊髄視床路)に達します。ここからの線維は内包を通り大脳皮質の知覚中枢(第3神経元=視床皮質路)に到達します。

聴覚路は、聴覚を伝達する伝導路で、蝸牛神経の線維は蝸牛神経核に入ります。この細胞から出た線維は反対側に移り、中脳の下丘に達します。ここで神経元を変え内側膝状体に達し、ここからの線維は内包を通って大脳皮質の聴覚中枢に到達します。

平衡覚路は、卵形囊・球形囊・半規管の興奮を伝達する伝導路で、前庭神経の線維は前庭神経核に入り、線維は反対側の小脳核に到達します。小脳核からの線維は錐体外路系に連絡して、体の平衡運動を調節します。

視覚路は、視覚を伝達する伝導路で、視神経の線推は視索となり外側膝状体に達し、ここからの線維は内包を通って大脳皮質の視覚中枢に到達します。

味覚路は、味覚を伝達する伝導路で、舌の前2/3に分布する顔面神経と、舌の後ろ1/3に分布する舌咽神経の線維は、上行して延髄の孤束核に入ります。孤束核からの線維は、反対側の視床に達します。1視床からの線維は大脳皮質の味覚中枢に到達します。

②下行性伝導路(遠心性伝導路)

中枢の興奮を末梢の筋および腺に伝える伝導路です。主なものに錐体路と錐体外路があります。

錐体路は骨格筋の随意運動を行う伝導路です。大脳皮質の運動領(野)から出た線維は内包を通り、中脳の大脳脚・橋を下行し延髄の錐体に達し、ここで大部分(75〜90%)は

左右に交差(錐体交叉)し、反対側の脊髄側索を下行し前角細胞(錐体側索路=第].神経元)に到達します。交叉しなかった神経線推は、同側の脊髄前索を下行し順次反対側の前角細胞(錐体前索路=第1神経元)に到達します。そして前角細胞からの神経線推は、前根を通って脊髄神経のなかに入り骨格筋に分布(第2神経元)します。このほかに、脳幹にある脳神経運動核(反対側の)に終わるもの(皮質延髄路)があります。錐体路に障害があると反対側に運動障害が起こります。

錐体外路は、大脳皮質の運動領(野)から出た線維が、大脳核・中脳被蓋の核・小脳核などの灰白質と連絡しながら最後には脊髄の前角細胞に到達します。ここからの線維は前根を通って脊髄神経の中に入り骨格筋に分布します。そして、骨格筋の緊張と無意識の協調運動を行います。

神経

(2)反射弓(反射路)

①反射弓

反射弓(RefLexarc)は、反射作用を起こすための興奮の伝導路で、反射路とも呼ばれます。

受容器からの興奮は求心性神経を通って介在ニューロンに達し、さらに遠心性神経を経て

効果器に伝達されます。この伝達の経路、すなわち求心性神経・介在ニューロン・遠心性神経の経路を反射路(反射弓)と言います。

反射弓は神経系で裏要な働きをします。最も単純な反射弓は2ニューロン弓と呼ばれます。感覚ニューロンと運動ニューロンの2つのニューロンだけから構成されるからです。3ニューロンは、感覚ニューロン、介在ニューロン:運動ニューロンから構成されます。反射弓は一方方向しかインパルスを伝えません。

②反射

受容器(Receptor)は、感覚神経の樹状突起の尖端にあります。受容器からの興奮は、求心性神経を通って、脊髄・脳幹・大脳皮質へと伝達されると同時に、一部は急転回して脊髄・脳幹の反射中枢に送られ、その興奮はただちに遠心性神経を通って効果器に働きます。これを反射(Reflex)と言います。

ニューロン

例えば、膝の少し下をツチでたたくと曲がっていた膝がピンと伸びます。これは大腿四頭筋の膝蓋腱に加えられた刺激が求心性神経を通って脊髄に達し、介在ニューロンを通って興奮が遠心性神経に伝わり大腿四頭筋を収縮させるからです。その結果として膝がピンと伸びるのです。

反射でも条件反射というのは後天的につくられます。例えば、犬に鈴の音を聞かせてから食事を与える訓練をすると、犬は鈴の音を問ムただけで唾液を出すようになるパブロフの実験などは有名です。

(3)求心性神経と遠心性神経

一般に、神経と呼んでいるものは末梢神経の場合が多く、それは神経線維の束のことです。末梢神経は脳や脊髄から出て、しだいに枝を出して細くなり全身に分布しています。この神経の機能は、刺激・興奮(インパルス)を伝えることで、その伝導方向によって、①遠心性神経と②求心性神経に分けられます。

①遠心性神経(下行性・運動性)

遠心性神経は、中枢の興奮を身体各部の筋と腺に伝え、その運動と分泌を行わせる神経です。筋に分布して運動を行わせる神経を運動神経と呼び、腺に分布して分泌をつかさどる神経を分泌神経と呼びます。

②求心性神徒(上行性・知覚性)

求心性神経は、身体各部の受容器(皮膚・眼・鼻など)で感じた刺激を中枢(脳・脊髄)に伝える神経で知覚神経とも言います。

末梢神経は、その神経線維が求心性だけのものを知覚性、遠心性だけのものを運動性、両方がまざっているものを混合性の神経と呼んでいます。脊髄神経の大部分は混合性です。

(4)運動神経と知覚神経

運動神経の神経細胞体は脳幹の運動核、脊髄の前角、側角にあります。神経細胞からの軸索は筋・腺を支配します。知覚神経(感覚神経)は、骨格筋・関節・各種感覚器からの情報を脳や脊髄に伝達します。

5 脊髄神経

(1)脊髄神経

脊髄神経(Spinalnerve)は、脊髄の両側(前外側溝・後外側溝)から前根(運動神経)と後根(知覚神経)をもって出る末梢神経で全部で31対あります。いずれも両根は間もな<1本に集まり、一対ずつ左右の椎間孔から外に出ています。これを脊柱の部位に従って次のように分けられます。

①頸神経(Cervicalnerves)は8対(C1〜C8)

②胸神経(Thoracicnerves)は12対(Th1〜Th12)

③腰神経(Lumbarnerves)は5対(L1〜L5)

④仙(骨)神経(Sacralnerves)は5対(S1〜S5)

⑤尾(骨)神経(Coccygealnerve)は1対(Co)

各脊髄神経は、椎間孔を出るとすく、、前枝,後枝・交通枝・硬膜枝に分かれます。硬膜枝は脊髄の硬膜に分布しています。後枝は固有背筋群と後頭部、体幹の後部(脊柱の両側)の皮膚に分布しています。交通枝は,交感神経の幹神経節と連絡しています。前枝は上下のものが互いに連絡しあって神経叢をつくります。胸神経は神経叢をつくりません。前枝の神経叢からの神経は、主に頸部、体幹の腹側と外側、上肢、下肢の骨格筋と皮膚に分布しています。

神経叢には頸神経叢(C1〜C4)、腕神経叢(C5〜Th1)、腰神経叢(Thl12〜L4)、仙骨神経叢(L4〜S3)、陰部神経叢(S2〜S4)があります。

神経の枝で筋に分布する神経を筋枝(運動神経線維)、皮膚に分布する神経を皮枝(知覚神経線維)と呼びます。脊椎

「脊髄神経は脊髄より前根および後根をもって出る。脊髄の前角(柱)にある前角細胞からの運動神経線維は前根を通って筋に分布する。皮膚および深部の受容器に分布した知覚神経線維は後根を経て後角(柱)に入る。そこで前根は運動性、後根は知覚性である。」このことをベル・マジャンディ(Bell-Magendie)の法則と言います。

(2)頸神経

頸神経は、第1頸神経から第4頸神経の前枝の吻合からなっていて、中斜角筋の前で胸鎖乳突筋に覆われています。主な枝としては次のものがあります。

①小後頭神経

小後頭神経は、胸鎖乳突筋の後縁を上がり、後頭部および耳介の後ろの皮膚に分布しています。

②大耳介神経

大耳介神経は、胸鎖乳突筋後縁のほぼ中央より上がり、耳介の前方および耳下腺部の皮膚に分布しています。

③頸横神経

頸横神経は、胸鎖乳突筋の後縁から前方に回り、前頸郡の皮膚に分布しています。

④横隔神経

横隔神経は、前斜角筋の前を下がり、胸腔に入り横隔膜に分布しています。横隔膜の運動神経です。

⑤頸神経の後枝

大後頭神経と第3後頭神経は後頭部に分布しています。

(3)腕神経

腕神経は、第5頸神経から第!.胸神経の前枝からなり、斜角筋裂から腋窩にかけてあります。ここからの神経は、主に上肢の筋と皮膚に分布しています。主な枝としては次のものがあります。

①肩甲背神経

肩甲背神経は、菱形筋と肩甲挙筋に分布しています。

②長胸神経

長胸神経は、前鋸筋に分布しています。

③肩甲上神経

肩甲上神経は、肩甲切痕を通って下がり、棘上筋と棘下筋に分布しています。

④胸背神経

胸背神経は、広背筋に分布しています。

⑤内側・外側胸筋神経

内側・外側胸筋神経は、鎖骨の下を下がって大胸筋と小胸筋に分布しています。

⑥肩甲下神経

肩甲下神経は、肩甲下筋の下を通って肩甲下筋と大円筋に分布しています。

⑦腋窩神経

腋窩神経は、三角筋と小円筋に分布し、皮枝は上腕上部の皮膚に分布しています。

⑧筋皮神経

筋皮神経は、内側上腕二頭筋と上腕筋との間を下がって、上腕のすべての屈筋に筋枝を与え、さらに前腕橈側の皮膚(外側前腕皮神経)に分布しています。

⑨内側上腕皮神経

内側上腕皮神経は、上腕内側の皮膚に分布しています。

⑩内側前腕皮神経

内側前腕皮神経は、前腕内側の皮膚に分布しています。

⑪正中神経

正中神経は、腕神経叢から出て内側二頭筋溝を通って肘窩に達し、前腕前面の正中を下がり手に達します。筋枝を、尺側手根屈筋と深指屈筋の内側半を除く前腕屈筋、母指内転筋を除く母指球筋、虫様筋(橈側より)に与えます。皮枝を、手掌と指の橈側半に与えます。この神経が麻痺すると猿手となります。

⑫尺骨神経

尺骨神経は、腕神経叢から始まり内側二頭筋溝を下がり上腕骨内側上顆の後ろ(尺骨神経溝)を回り、前腕の前に出て尺側を下がって手に達します。筋枝は深指屈筋と尺側手根屈筋の内側半、母指内転筋、小指球筋、骨間筋、虫様筋(尺側より)に分布しています。皮枝は、手掌と手背および指の尺側半の皮膚に分布しています。’この神経が麻痺すると鷲手となります。

⑬橈骨神経

橈骨神経は、腕神経叢から始まり上腕の背側(橈骨神経溝)を通り、さらに腕橈骨筋と上腕骨の間を通り肘関節の外側に至り前腕の橈側を下がって手に達します。筋枝は、上腕と前腕の伸筋に分布します。この神経が麻痺すると下垂手となります。皮枝は、上腕と前腕の後側(後上腕皮神経と後前腕皮神経)、手背の橈側半の皮膚に分布します。(背側指神経)

(4)胸神経

胸神経は12対あります。椎間孔を出てすぐ①前枝と②後枝に分かれます。

①前枝

前枝は、肋間神経と言います。肋骨溝を肋間動静脈に沿って走ります。第1〜第6肋間神経は、ほぼ水平に走り胸骨に達します。第7〜第12肋間神経は前下方に走り前腹壁に入ります。経過中に筋枝と皮枝を出します。

筋枝は、深胸筋(外肋間筋・内肋間筋・最内肋間筋・肋下筋・胸横筋)、腹直筋、内・外腹斜筋、腹横筋に分布しています。皮枝は、外側皮枝では胸壁および腹壁の外側部皮膚、前皮枝では胸腹壁の前部の皮膚に分布しています。

②後枝

後枝は、内側枝と外側枝に分れ、体幹後壁の皮膚と固有背筋に分布しています。

(5)腰神経

第12胸神経〜第4腰神経の前枝からなり、腰筋裂(大腰筋と小腰筋の間)の中にあります。枝としては次のものがあります。

①腸骨下腹神経

腸骨下腹神経は、前腹筋に筋枝を、下腹部皮膚に皮枝を分布しています。

②腸骨鼠径神経

腸骨鼠径神経は、側腹筋に筋枝を、陰囊(陰唇)に皮枝を分布しています。

③陰部大腿神経

陰部大腿神経は、精巣と鼠径部皮膚に分布しています。

④外側大腿皮神経

外側大腿皮神経は、大腿外側部の皮膚に分布しています。

⑤大腿神経

大腿神経は、腰神経から始まり、鼠径靭帯の下(筋裂孔)を通り大腿の前面を下がり、さらに下腿の内側を下がり、足背の内側面の皮膚に達します。筋枝は、腸腰筋と大腿の伸筋に分布しています。皮枝は、大腿の前面・下腿の内側・足背内側の皮膚に分布しえいます。(伏在神経)

⑥閉鎖神経

閉鎖神経は、閉鎖孔を出て大腿の内側に達し内転筋と大腿内側の皮膚に分布しています。

(6)仙骨神経

仙骨神経は、第4腰神経〜第3仙骨神経の前枝からなり、仙骨の前面から大坐骨孔にかけてあります。主な枝としては次のものがあります。

①上殿神経

上殿神経は、梨状筋上孔を通って中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋に分布しています。

②下殿神経

下殿神経は、梨状筋下孔を通って大殿筋に分布しています。

③後大腿皮神経

後大腿皮神経は、梨状筋下孔を通って、殿部と大腿後面の皮膚に分布しています。

④坐骨神経

坐骨神経は、仙骨神経から起こり、梨状筋下孔を経て大殿筋の下を通り、大腿後側の中央を大腿二頭筋長頭に覆われて下がります。筋枝を大腿屈筋に与え、膝窩の少し上で総排骨神経と脛骨神経に分かれます。

⑤総腓骨神経

総腓骨神経は、脛骨神経と分かれて膝高から外下方に下がり、腓骨頭の後ろを回り浅腓

骨神経と深腓骨神経に分かれます。浅腓骨神経は、長・短腓骨筋と足背の皮膚に分布しています。深胱骨神経は、前脛骨筋・長母指伸筋・長指伸筋に分布しています。

⑥脛骨神経

脛骨神経は、膝窩からヒラメ筋腱弓の前を通って内果の後下方で内側足底神経と外側足底神経となり足に達します。筋枝を下腿屈筋と足底の筋に与えます。皮枝は、下腿後面や足底の皮膚に分布しています。

⑦陰部神経

陰部神経は、第2仙骨神経〜第4仙骨神経の前枝からなります。神経は外陰部の筋と皮膚に分布しています。第2仙骨神経〜第4仙骨神経に含まれる副交感神経は、前仙骨孔を出て途中で分かれ骨盤神経となり、骨盤神経叢で交感神経と交流して共に骨盤内臓に分布しています。

6 脳神経

脳神経(Craninalnerve)は、脊髄神経とともに末梢神経に属します。脳神経は、脳から出て主に頭部と頸部の筋と皮膚、頸部、胸部、腹部(骨盤内臓を除く)、内臓などに広く分布し、12対あります。

脳神経

①嗅神経

嗅神経は、嗅覚を伝える知覚性の神経で、鼻腔上壁の嗅細胞から起こり篩骨の篩板(小孔)を貫いて嗅球に通じています。

②視神経

視神経は、視覚を伝える知覚性の神経で、網膜の視細胞から起こり視神経管を通って頭蓋腔に入り、視(神経)交叉をし視索となって間脳の外側膝状体に通じています。

③動眼神経

動眼神経は、眼球の運動と上眼瞼を引き上げる運動性の神経です。中脳から起こり大脳脚と橋の間を出て上限窩裂を通って眼常に入り、眼筋(上直筋・下直筋・内側直筋・下斜筋)と上眼瞼挙筋に分布しています。この神経の中を副交感神経線推が走り、毛様体神経節を経て、毛様体筋と瞳孔括約筋に分布しています。

④滑車神経

滑車神経は、眼球の運動を行う運動性神経です。中脳の下丘のすぐ下から起こり(この脳神経だけが背側から出ます)上眼窩裂を通って眼常に入り、眼筋(上斜筋)に分布しています。

⑤三叉神経

三叉神経は、脳神経中最大で、橋の外側から起こる太い知覚根と細い運動根からなる混合性の神経です。知覚根は橋を出るとすく、、三叉神経節をつくり、3枝(眼神経・上顎神経・下顎神経)に分かれます。運動根は三叉神経節を通りぬけ下顎神経とともに走り咀嚼筋に分布しています。

3枝の眼神経は、上眼窩裂から眼窩の上縁を経て前頭神経となり、さらに眼窩上神経外側枝、内側枝となって前頭郡と頭頂部の皮膚に分布しています。上顎神経は、正円孔から頭蓋の外に出て、下眼窩裂から眼窩下孔を経て上顔部の皮膚に分布しています。途中で上歯槽神経を出して上歯に分布しています。下顎神経は卵円孔を出て、知覚枝は下顎部の皮膚や舌の粘膜に、運動神経線維は咀嚼筋に分布しています。下歯槽神経は下顎管を通ってオトガイ孔から外に出て、下歯に枝を出して分布しています。俗にいう顔面神経痛は三叉神経痛のごとで、圧痛点が眼窩上切痕:眼窩下孔・オトガイ孔にあります。

⑥外転神経’

外転神経は、眼球の運動せ行う運動性の神経です。橋の後内側から起こり、上眼窩裂を通り外側直筋に分布していま‘す。

⑦顔面神経

顔面神経(広義)は、顔面神経(狭義)と中間神経とからなります。浅頭筋(表情筋)を支配する運動枝と中間神経から您る混合神経です。橋と延髄の間の外側から起こり、内耳孔から内耳道に入り、顔面神経管のなかを通って乳歷突起の内側にある茎乳突孔から頭蓋の外に出て、耳下腺郡で多数の枝を出して表情筋に分布しています。

中間神経の味覚線維は、顔面神経管の途中で分かれて舌の前2/3に分布して味覚を伝えます。また副交感神経も中間神経に含まれ、顎下神経節を経て顎下線、舌下線に翼口蓋神経節を経て涙腺に分布しています。

⑧内耳神経

内耳神経は、蝸牛神経と前庭神経からなります。蝸牛神経は聴覚を伝える神経でコルチ器官に始まり蝸牛神経節を経て内耳道を通って延髄の蝸牛神経核に入ります。前庭神経は平衡覚を伝える神経で、前庭および半規管から始まり前庭神経節を経て内耳道底で蝸牛神経と合流します。神経線維は延髄の前庭神経核に入ります。

⑨舌咽神経

舌咽神経は、舌と咽頭に分布する神経で、延髄から起こり舌の後ろ1/3に分布し味覚をつかさどります。また咽頭粘膜と咽頭筋に分布し、知覚と運動を行います。副交感神経も含み、耳神経節を経て耳下腺に分布しています。

⑩迷走神経

迷走神経は、主として副交感神経線維からなります。運動・知覚・分泌など行います。延髄から起こり、頸静脈孔を通り頭蓋の外に出て総頸動脈の後外側に沿って下がり、胸腔に入り食道の両側にそって走り、食道とともに横隔膜(食道裂孔)を貫いて腹腔に入り、胃・腸・肝臓・膵臓・月卑臓・腎臓・副腎など腹部内臓に分布しています。

途中で枝を出し、咽頭・喉頭・甲状腺・心臓・気管・気管支・肺・食道などに分布しています。

⑪副神経

副神経は、運津性の神経で、延髄から起こり頸静脈孔を出て胸鎖乳突筋と僧帽筋に分布しています。

⑫舌下神経

舌下神経は、舌の運動を行う運動神経で、延髄から起こり舌下神経管を通って舌筋に分布しています。

7 自律神経

(1)自律神径系

自律神経系(Autonomicnervoussystem)は、末梢神経系の一部とされています。身体の様々な腺組織、心臓、胸部や腹部の平滑筋を脳や脊髄と繋いでいます。すなわち、脊髄や脳幹からのインパルス(神経に沿って情報を運ぶシグナル)を末梢組織に伝える運動性のニューロン(神経細胞)です。

自律神経は、例えば、心臓の拍動や胃腸の収縮や腺からの分泌など不随意運動を調節する神経系で、消化・吸収・循環・排泄・分泌・生殖に関係し、生命維持に重要な役割を果たしています。

自律神経は、交感神経と副交感神経の2種類があります。前述のように、両者は心筋組織(心臓)と平滑筋組織(内臓・血管など)および腺組織に分布し、その運動と分泌作用を行います。両者の働きは相反し、一方が促進的で他方は抑制的に働きます。例えば、心臓の運動を促進させるのは交感神経で、これを抑制させるのは副交感神経(迷走神経)です。

交感神経と副交感神経は、中枢を出て目的の臓器に達するまでに必ず神経節が介在し、ニューロンを交代します。中枢からこの神経節までの線維を節前ニューロン(神経線維)と言い、神経節から臓器までの後ろの線維を節後ニューロンと言います。

言い換えれば、節前ニューロンは脊髄と神経節の間にある神経インパルスを伝導する自律神経で、節後ニューロンは神経節から心筋・平滑筋・腺上皮組織に神経インパルスを伝導する自律神経です。

(2)自律紳経の伝達

中枢神経(脳と脊髄)から出て、臓器交換器への自律神経伝導路は、2つのニューロンからなります。脊髄や脳幹から始まる節前ニューロンのインパルスは、自律神経節に伝わります。そこでシナプスを介して節後ニューロンに伝わります。節後ニューロンは神経節で伝えられたインパルスを臓器交換器へ伝えます。交感神経と副交感神経の働きは、節後ニューロンから化学伝達物質が分泌され、それが臓器に作用するためです。交感・副交感神経ともに節前ニューロンはアセチルコリンを分泌(コリン作動性線維)し、交感神経の節後ニューロンはノルアドレナリンを分泌(アドレナリン作動性線維)します。副交感神経の節後ニューロンはすべてアセチルコリンを分泌します。

①交感神経系(胸腰神経系)

交感神経(Sympatheticnervous)の節前ニューロンの樹状突起と細胞体は脊髄の胸部および上腰部の灰白質にあります。したがって交感神経系を胸腰神経系と呼ぶこともあります。

交感神経は、激しい運動や、または怒り・恐怖・不安などの強い感情が生じたとき、交感神経を駆けめぐるインパルスが多くの臓器に影響を与えます。例えば、刺激(ストレス)を受けると、交感神経は多くの臓器交換器にインパルスを送り、運動に対して心拍数を増加させ、血管を収縮し血圧を上昇させ、骨格筋内の血管を弛緩し血液供給を高めさせるなどを行います。胃腸などの消化管の収縮は抑制し消化を妨げます。刺激に対するこの反応は、激しい筋運動に備える(例えば闘うとか逃げる)もので、闘争逃避反応と呼ばれます。

交感神経の伝導は、脊髄(胸髄・腰髄)の側角から出て、前根(腹側)を経て白交通枝を通り幹神経節に入り一部は叢の神経節,に達します。この神経節から出た節後ニューロンは、内臓・血管・腺に分布します。交感神経幹からのおもな枝には次のものがあります。

頸部の幹神経節(頸椎の両側)は、瞳孔散大筋・唾液腺・甲状腺に行く枝のほかに、3本の心臓神経(心臓促進神経)が出て心臓に分布します。

胸部の幹神経節(胸椎の両側)は、肺・気管・気管支など胸部内臓に分布します。ほかに第5〜第9胸神経節から大内臓神経が、第10〜第:L1胸神経節から小内臓神経が出て、横隔膜を貫いて腹腔神経節に入ります。ここからの神経線維は、迷走神経とともに胃・腸・肝臓・膵臓・脾臓など腹部内臓に分布します。

仙骨、尾骨部の幹神経節は、神経線維が骨盤神経に入ります。ここからの神経は副交感神経とともに直腸・膀胱・生殖器など骨盤内臓に分布します。

②副交感神経系(頭仙神経系)

副交感神経(Parasympathetic)通常の生活時には多くの内臓に影響を与えています。副交感神経を伝わるインパルスは、心拍数を低下させたり、消化器官を亢進させたり、消化液やインスリンの分泌を促進したりします。

副交感神経の節前ニューロンの樹状突起と細胞体は、脳幹と仙髄の灰白質にあります。ですから、頭仙神経系とも顾幹仙髄神経系とも呼ばれます。副交感神経は、脳脊髄神経に混在して走り末梢の器官や組織に分布します。その起始核を中脳部、菱脳部、仙骨部に分けます。

中脳部の動眼神経副核から起こり、動眼神経とともに眼窩に入ってから分かれて毛様体神経節を経て毛様体筋と瞳孔括約筋に分布します。菱脳部の上唾液核から起こる節前ニューロンは顔面神経とともに走り、2つに分かれて、ひとつは大錐体神経となり翼口蓋神経節を経て涙腺に分布し、他のひとつは鼓索神経とともに走り、分かれて顎下神経節を経て直下腺と顎下腺に分布します。下唾液核から起こる節前ニューロンは舌咽神経とともに走り、分かれて小錐体神経となり、耳神経節を経て耳下腺に分布します。迷走神経背側核から起こる節前線維は、迷走神経とともに走り、頸部・胸部・腹部の内臓に分布します。仙骨部では、第2〜第4仙髄から起こる節前ニューロンは骨盤内臓神経となり、交感神経の下、下腹神経叢(骨盤神経叢)に合流して外陰部と骨盤内臓に分布します。!

③交感神経と副交感神経

自律神経系は、身体の自律的で不随意な機能を調整します。生命を維持し、また回覆させる働きをしています。多くの内臓は自律神経系で二重に支配されています。副交感神経と交感神経のインパルスは各臓器に休むことなく送り込まれ、臓器の機能は両インパルスによって正反対の影響を受けています。心臓は、拍動数を上げるよう交感神経インパルスを受けながら、下げるように副交感神経のインパルスも受けています。2つの相反するカの関係は、2つの神経伝達物質の比率によって決まり、したがって心拍数も決まるのです。

節前ニューロンの樹状突起と細胞体は脊髄や脳幹にあります。視床下部と大脳皮質の情動脳と呼ばれる部分からインパルスを受け、伝導路を通して情動は心臓・平滑筋・腺分泌など身体の自律的な機能に関わります。怒りや恐怖は交感神経を亢進させ、安定した精神のもとでは副交感神経が優位になります。

脊椎神経

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