解剖生理学7 感覚器

解剖生理学7 感覚器

1 感覚器系

(1)感覚器とは

感覚器(Senseorgan)は、目・耳・鼻・舌・皮膚・内臓・筋肉の各部にあります。それら身体の各部に与えられた刺激を感受する器官を感覚器と言い、それぞれ受容器の感覚装置を持ち、これに知覚神経の終末が連結しています。

感覚器で感受された刺激は、求心性神経を伝わり、大脳の中枢に達し、そこで感覚が認識されます。すなわち、音がわかり、味を知り、痛みを感じることができます。このように感覚が生じるためには、次の3つの要素が必要です。

先ず刺激を感受する①感覚器、次に刺激を大脳の中枢に伝える②求心性神経、そして認識する大脳の③知覚中枢で、このうちどこかひとつでも障害があると感覚は起こりません。

感覚器には、視覚器(眼)、嗅覚器(鼻)、平衡聴覚器(耳)、味覚器(舌)、触覚器(皮膚)があり、併せて五感器と呼びます。

視覚は、①視覚器(眼)から②視神経を通して③視覚中枢(後頭葉)で認識されます。

嗅覚は、①嗅覚器(鼻)から②嗅神経を通して③嗅覚中枢(側頭葉)で認識されます。

聴覚は、①平衡聴覚器(耳)から②内耳神経を通して③聴覚中枢(側頭葉)で認識されます。

味覚は、①味覚器(舌)から②顔面神経・舌咽神経を通して味覚中枢(頭頂葉)で認識されます。

触覚は、①触覚器(皮膚)から②脳・脊髄神経を通して体知覚中枢(頭頂葉)で痛、温、冷を認識します。

また、筋肉と腱の結合部分付近にある特殊受容器や骨格筋組織の深部にある特殊受容器を固有受容器と呼びます。固有感覚は筋のなかにある筋紡錘、腱のなかにある腱紡錘、関節包にあるパチニー小体からのインパルスが小脳および大脳に伝えられ、身体の位置、姿勢などを認識します。

2 皮膚

(1)皮膚とは

皮膚(Cutaneousmembrane)は、体の表面を包む丈夫な弾力性の器官で、最も広く分布し、一般的には体重の約16%を占め、表層を構成する上皮組織と内部の結合支持組織(滑膜など)から成ります。皮膚は体を保護し、汗の分泌・皮脂の分泌・体温の調節・ビタミンDの生成・皮膚感覚など重要な働きをします。その構造は、①表皮、②真皮、③皮下組織の3層からできています。

①表皮

皮膚の最も外側にある薄い層で、重層扁平上皮からなり、角質層・淡明層・顆粒層・有棘層・基底層に分かれます。

角質層はケラチンで満たされた細胞から成り、角化して刺激に強く、後に、アカとフケになって離れ落ちます。

基底層(胚芽層)は色素層とも言い、表皮のいちばん下層にあり、たえず分裂増殖して表面に送り出し、脱落した細胞を補っています。またメラニン産生細胞があり、メラニン(黒褐色)という色素を産生します。

②真皮

表皮の下で強靭結合組織からなり、乳頭層と網状層に分かれ、多くの管や神経が通っています。皮膚のシワは網状層にある膠原線維の走行によってできます。

③皮下組織

最下層で疎性結合組織からなり、脂肪組織を有します。これを皮下脂肪と言います。

(2)皮膚の働き

皮膚は触覚・圧覚・痛覚・温覚・冷覚などの感覚器としての作用のほかに、体の保護・排泄作用・体温調節・ビタミンDの生成・呼吸作用・脂肪の貯蔵・細菌の侵入を防ぐ、働きをします。

皮膚

(3)皮膚感覚と神経

知覚神経の末端は、様々な形で皮膚に分布しています。自由神経終末は真皮と表皮にあり痛覚を司ります。マイスネル小体は真皮にあり触覚を、パチニー小体は皮下組織にあり圧覚を、ルフィニ小体は真皮にあり温覚を、クラウゼ小体は真皮にあり冷覚を感じます。

(4)皮膚の付属器官

皮膚の付属器官は皮膚が変形してできたもので、角質器として①爪と②毛、皮膚腺として③脂腺、④汗腺、⑤乳腺があります。

①爪

爪(Nail)は、皮膚の付属器官で表皮の細胞によって作られます。爪は、指やつま先の先端を覆う上皮の細胞がケラチンで満たされ、固く板状になったものです。外に出ている部分を爪体(Nailbody)、皮膚のなかにかくれている部分を爪根(Nailroot)と言います。

②毛

毛(Hair)は、手掌と足底を除く皮膚の表面にあります。構造は表面に毛小皮が重なり合っていて、内部に毛皮質と毛髄質があります。

毛の皮膚表面に出ている部を毛幹(Hairshaft)>なかに入っている部を毛根(Hairroot)と言います。毛根の先は少し曲がってふくらんでいて、毛球(Hairbulb)と言います。毛球の下はへこんで毛乳頭(Hairpapilla)があり、毛の成長・栄養・知覚などの働きをします。

毛根は白い毛包に包まれていて、これに脂腺が開口して毛孔とともに皮膚表面に開いています。立毛筋(平滑筋)があり、収縮すると鳥肌をつくり体温調節を行います。

③脂腺

脂腺は皮脂腺(Sebaceousgland)とも呼ばれ、毛が発育するところにあり、毛や皮膚を潤す油分を分泌します。皮脂月泉の細い導管は、毛根の毛包Iこ開いて皮脂を分泌し毛や皮膚をなめらかにし、つやを与える働きをします。毛の発育がない手掌と足底には皮脂腺はありません。皮脂は自然のスキンクリームで、皮膚の乾燥やひび割れを防ぎます。

性ホルモンの血中値が上昇すると皮脂の分泌が刺激され、皮脂が皮脂腺の導管にたまって白い膨らみを作るのがニキビです。

④汗腺

汗腺(Sweat=Sudoriferousgland)は、大汗腺(アポクリン汗腺)と小汗腺(エクリン汗腺)から成ります。

大汗腺は身体の腋窩・外耳道・乳輪・外陰部などの部位にあって、臭気のある汗を分泌します。

小汗腺は、全身の皮膚の至る所に200〜250万ぐらい分布し、とくに手掌・足底・前額部に多くあります。発汗を行い、老廃物を排泄し、体温調節に重要な働きをします。発汗には温熱性発汗・精神性発汗・味覚性発汗があります。

温熱性発汗は、気温の高いときや運動したあとに出る汗で体温調節を行います。

精神性発汗は、精神感動によって出る汗で、・手掌・足底・腋窩に多く分泌します。

味覚性発汗は酸味や辛味などの味覚の刺激によって出る汗で、顔面や頭部に多く分泌します。これらの発汗を行う発汗中枢は、間脳の視床下部にあります。

汗の成分は弱酸性で99%が水分、残りが食塩・尿素・尿酸・アンモニア・クレアチニン・乳酸などです。

⑤乳腺

乳腺(Mammarygland)は、女子の乳房の中に十数個あります。各乳腺からは1本ずつの乳管が出て、乳頭の前で乳管洞をつくったのち乳頭に開口します。乳管洞は乳汁がたまります。

3 視覚器(目)

(1)目

目(Eye)は、光を感じ物を見分ける器官で眼窩のなかに一対あります。目は眼球と副眼器(眼瞼・涙腺・眼筋)からできています。

眼球(Eyeball)は、眼窩のなかにある球形の器官で、強膜(Sclera)、脈絡膜(Choroid)、網膜(Retina)の3層構造からなります。周りの壁は①眼球線維膜、②眼球血管膜、③眼球内膜の3.層からなり、内部に④水晶体、⑤硝子体,⑥眼房水があります。

目

①眼球線維膜

眼球の外層で、黒目の前面のうすく透明な膜を角膜(Cornea)と言います。血管は存在しませんが、知覚神経は分布しているので角膜反射が起こります。角膜反射とは角膜が刺激されると眼瞼が反射的に閉じることです。反射弓は三叉神経(眼神経)、中脳、顔面神経です。後ろの白目の部分の膜を強膜と言います。

②眼球血管膜

眼球壁の中層にあり血管と色素の多い膜で、脈絡膜(Choroid)・毛様体(Ciliary)・虹彩(Ilis)からできています。脈絡膜は、強膜の内側にある黒褐色の膜で眼球の内部を暗室にしています。毛様体は、脈絡膜の前にある部分で、なかに毛様体筋が入っていて、水晶体(Lens)の厚さを調節しています。また毛様体から毛様体小帯が出て水晶体の外側縁に輪状に付着しています。虹彩は、毛様体の前につづき水晶体の前方にある円形の膜(くろ目)で力メラで言うとしぼりの役目をします。その中央に光が通過する瞳孔(Pupil)があります。虹彩の内部には瞳孔括約筋と瞳孔散大筋があります。瞳孔括約筋は瞳孔の周囲を輪状に走り副交感神経に支配され瞳孔を小さくする働きをします。瞳孔散大筋は放射状に走り交感神経に支配され瞳孔を散大する働きがあります。

③眼球内膜

網膜(Retina)と呼ばれ、眼球壁の最内層の神経組織でできた膜を言います。カメラで言うとフィルムに相当し、光を感じる視細胞(錐状体細胞と杆状体細胞)があります。杆状体細胞は、網膜の周囲に多く、暗い所で光を感じるが色は感じません。錐状体細胞は、明るい場所で作用し、色を感じます。ロドプシンという視物質(ビタミンAと結合)を含んでいます。網膜の後部には視神経乳頭があり、ここから視神経が始まります。この部は光と色を感じないので盲点(マリオット盲斑)と言います。視神経乳頭のやや外側の中心部に黄斑(黄色の部分)があり、錐状体細胞が多いので視力がもっとも強い部分です。

④水晶体

水晶体(Lens)は、虹彩の後ろにある直径1cmたらずの両凸レンズ様の透明体です。外側縁についている毛様体筋の働きにより彎曲度を変え、射入光線の屈折を調節し網膜上に焦点を作り、映像にします。水晶体が長年にわたり日光の紫外線を浴びると硬化し白濁します。これを白内障(Cataract)と言います。また、年をとると近くの物が見づらくなります。これは水晶体が弾性を失い、近くの物体に焦点を合わせるために膨らむことができなくなったためです。これを老眼(Presbyopia)と言います。

⑤硝子体

硝子体(液)(Viteroushumor)は、水晶体の後ろの硝子体眼房にあるゼリー状の物質で、眼球の形を保つ働きをしています。

⑥眼房水

眼房水(Aqueoushumor)は、角膜と虹彩との間(前眼房一前眼房水)、虹彩・毛様体と水晶体の間(後眼房一後眼房水)に入っているー種のリンパ液で、角膜や水晶体の栄養を行っています。眼房水は毛様体上皮から分泌し強膜静脈洞に吸収されます。眼房水は絶えず作られ眼房を満たし排泄されます。この排泄が何らかの理由で止まると、眼球内圧が増加して失明に原因になります。これを緑内障(Glaucoma)と言います。

(2)眼の調節作用

①遠近調節

近くの物を見るとき、毛様体筋が収縮するため毛様体小帯がゆるんで水晶体が厚くなり屈折力を増します。同時に瞳孔も反射的に小さくなり網膜上にピントを合わせます。

遠くの物を見るとき、反対に水晶体は薄くなり反射的に瞳孔も散大し網膜上にピントを合わせ映像を映し出します。

②明暗調節

強い光のある場所や明るすぎる場所では、副交感神経によ.り瞳孔括約筋が収縮し、瞳孔を縮小させ、眼に入る光の量を少なくしてよく見えるようにします。

逆に光の少ない場所や暗いところでは、交感神経により瞳孔散大筋が収縮し、瞳孔を散大させ、光の量を多く取り入れてよく見えるようにします。

③近視

水晶体と網膜の距離、すなわち眼球の幅が伸びると眼球軸が長くなります。それにくらベ屈折力が大きいと網膜の前方で像を結びます。ピントが定まらず映像はぼやけます。これを近視Myopiaと言います。凹レンズで補正します。

④遠視

眼球軸が短く、水晶体の屈折力も弱いと網膜の後方で像を結ぶことになり、映像がぼやけます。これを遠視(Hyperopia)と言います。凸レンズで補正します。

⑤色盲

網膜の視細胞(錐状体細胞)に異常があって色の識別ができないもので、もっとも多いのは赤線色盲です、。男子に多く伴性遺伝です。

(3)眼の付属器(副眼器)

副眼器は眼球に付属する器官です。眼瞼と涙腺は眼球を保護し、眼筋は眼球の運動を行います。外眼筋の上直筋は動眼神経により眼球を上方に向けます。下直筋は動眼神経により眼球を下方に向けます。内側直筋は動眼神経により眼球を内方に向けます。外側直筋は外転神経により眼球を外方に向けます。上斜筋は滑車神経により眼球を下外側に向けます。下斜筋は動眼神経により眼球を上外側に向けます。上眼瞼挙筋は動眼神経により上眼瞼を引き上げます。

4 平衡聴覚器(耳)

(1) 平衡聴覚器の構造

耳は聴覚の他に平衡やバランスの感覚器官としても機能しています。耳介を除く耳の大部分は側頭骨内にあって保護されています。耳は①外耳、②中耳、③内耳の3部からできています。

①外耳

外耳(Externalear)は、耳介(Auricle)と外耳道(Externalauditorycanal)からなり、音波を集めて中耳を経て内耳に送る働きをします。外耳道は長さ3cmぐらいの管で、奥に鼓膜(Tympanicmembrane)があります。外耳道を伝わってきた音波は鼓膜をたたき振動させます。鼓膜が外耳と中耳の境界になります。知覚は迷走神経の支配によるので外耳道を刺激すると胸部内臓からのものと混同し咳が出ることがあります。

外耳道外側3分の1の皮膚には多数の短い毛と耳垢腺があります。耳垢腺は耳アカ呼ばれるロウのような物質を分泌します。

②中耳

中耳は(Middleear)は、鼓室と鼓膜からなります。鼓膜は外耳道と鼓室との境にある直径約1cm,厚さ約0.1mmの薄い膜です。鼓室内1こ3俚の耳小骨があり、鼓膜に付着するツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨と順に関節的に連結し、アフ’ミ骨は前庭窓に接し鼓膜の振動を内耳の蝸牛管に伝えます。鼓室には長さ3〜4cmの耳管があり、咽頭鼻部の耳管咽頭口に開口し鼓室内の気圧を調節する働きをします。

③内耳

内耳(Innerear)は、側頭骨錐体の中にあり、聴覚と平衡覚を感受する装置を持ってます。骨迷路と言われる複雑な形の骨‘室の中に膜迷路と言うさらに複雑な形をした膜性の袋が入っています。骨迷路は前庭・骨半規管・蝸牛の3部に分かれます。膜迷路は骨迷路のなかに保護され、卵形囊・球形囊・膜半規管および蝸牛管を納めています。卵形囊と球形囊および半規管は、前庭神経により平衡覚を感受します。蝸牛管は内部にラセン器(コルチ器)があって蝸牛神経により聴覚を感受します。骨迷路と膜迷路の間に外リンパがあり、膜迷路の内部に内リンパがあります。

(2)聴覚

外耳道に入った音波は鼓膜を振動させ、それが耳小骨に伝えられ、振動の圧力が約20倍になります。この振動は前庭窓の膜を振動させ、骨迷路の蝸牛部の外リンパに伝わります。(前庭階の外リンパ、鼓室階の外リンパに伝わります。)さらに膜迷路の蝸牛管にある内リンパに伝えられ、この動きがコルチのラセン器にある有毛細胞を刺激し、神経インパルスを発生させます。この神経インパルスは蝸牛神経に伝わり、蝸牛神経核を経て大脳側頭葉の聴覚中枢に達して聴覚が認識されます。

(3)平衡覚

体の傾きや頭の回転運動などが刺激となり、前庭と半規管の内部にある感覚上皮(有毛細胞)を刺激します。その興奮は前庭神経から前庭神経核を経て小脳に伝達されます。ー部は上行し視床を経て大脳皮質(体知覚中枢)に達します。他は前庭神経核から下行し脊髄,前索を通って前角に達し、反射的に筋運動が調整され体の平衡が保たれます。途中脳幹で眼筋の運動神経核とも連絡します。

耳

5 嗅覚器

(1)嗅覚器

嗅覚を感受する受容器は鼻腔の上壁にある嗅細胞(嗅上皮)です。嗅細胞は神経突起を出して嗅神経となり篩骨の篩板の小孔を貫いて嗅球に伝わります。嗅球から嗅索を通り大脳に伝達されます。

(2)嗅覚

空気中に含まれるにおいの刺激が嗅上皮を刺激し、その興奮が嗅神経に伝えられ大脳側頭葉の嗅覚中枢に達し嗅覚が起こります。

匂いの受容器は鼻腔のやや奥まったところに存在します。ですから、かすかな匂いは鼻をかがなければなりません。嗅細胞には線毛が無数にあります。この嗅線毛はさまざまな化学物質を認識し、神経インパルスを発生させ、嗅細胞を刺激し興奮させます。嗅受容器は鼻腔を覆う水溶粘液にとけ込んだ化学物質だけを検出します。

鼻

6 味覚器

(1)味覚器

味覚を感受する味覚器官は、味蕾(Tastebud)と呼ばれる化学受容器で、後で味覚として認識されることになる神経インパルスを発生します。神経インパルスは味蕾にある味細胞(Gustatorycell)によって出され、化学物質は睡液に溶け込んだ後、味細胞を刺激し興奮させます。

味蕾は有郭乳頭、葉状乳頭、茸状乳頭の上皮中にあります。ほかに舌の粘膜でも直接的に味覚神経の終末が感受します。舌の前2/3は顔面神経、舌の後ろ1/3は舌咽神経、咽頭、咽頭蓋は迷走神経によって支配されています。

(2)味覚

水や唾液に溶けた味が味蕾や舌粘膜で感受され、その興奮が顔面神経および舌咽神経の味覚神経に伝えられ、大脳の味覚中枢に達して味覚を感じます。

味覚には甘味、辛味、酸味、苦味の種類があり、舌の部位によって感じ方が異なります。甘味(Sweet)は舌の尖端で、辛味(塩味)は甘味よりやや内側の舌の尖端の両脇で、酸味は舌の背と中程の両脇で、苦味は奥の舌根近くで最も鋭敏に感じると言われています。

さらに口や喉のどの組織の一部にも味覚受容器があります。

舌

 

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