解剖生理学3 消化器

解剖生理学3 消化器

1 消化器系

(1)消化器系とは

消化器系(Digestive system)内面が凹凸で両端が開いた管で、消化管とも胃腸管とも呼ばれ、成人ではこの全長が約9mあります。生体が活動し健康を維持するために食物を摂取し栄養分を吸収する重要な働きをしています。

食物は体内で、消化・吸収・代謝の過程を経ます。例えば、口腔で食物を摂取し、かみ くだき、咽頭、食道、胃、腸へと送ります。これに消化液(唾液、胃液、胆汁、腸液、膵 液)中の酵素の働きにより分解し、栄養分を胃や腸から吸収し血液、リンパのなかに送り 込みます。このような働きをもつ器官の集まりが消化器系です。
消化器系 消化器系は、消化管と消化腺からなります。消化管は、口腔・咽頭・食道・胃・小腸(十 二指腸、空腸、回腸)・大腸(盲腸・結腸・直腸)・肛門からなります。消化腺は、消化液 を分泌する腺で、口腔腺(唾液腺)・肝臓・膵臓・胃腺・腸腺から構成されています。

2 口腔と付属器官

(1) 口腔

口、つまり口腔(Oral cavity)は消化管の入口で、歯と舌がり、食物を摂取し咀嚼・嚥下・味覚など行い、発声にも働きます。食物が口に入ると消化過程がただちに始まります。他の消化器のように口も内面が粘膜で覆われています。

口腔の上壁は口蓋で前2/3を硬口蓋と言い、内部に骨(上顎骨の口蓋突起と口蓋骨)があります。後ろ1/3には骨がないので軟口蓋と言います。軟口蓋の後縁を口蓋帆と言い、その正中部から口蓋垂(Uvula)が下がっています。

口蓋帆の左右基部のところに口蓋扁桃があります。扁桃炎とかジフテリアなどのときに は食物があたって嚥下のときに痛みを感じます。

(2)歯

歯(Teeth)は食物の咀嚼を行う硬い器官で、上・下顎骨の歯槽に生え、馬蹄形の歯列弓をつくっています。生後6〜7か月から生え始めて、2歳ごろになると上下にそれぞれ10本 ずつ生えそろいます。これを乳歯(Deciduous teeth.)と言い、上下で20本あります。7〜8 歳になると抜け変わって新しい歯が生えてきます。これを永久歯(Adultteeth)と言い上下で32本あります。これは上下それぞれ切歯4本、犬歯2本、小臼歯4本、大臼歯6本から成 っています。

歯には、歯冠、歯頸、歯根の3つの主要部分から成ります。歯の構造は象牙質が主体で 内部に歯髄腔があり歯髄(血管・神経の集まり)が入っています。歯冠部では象牙質の表面をエナメル質が覆い、歯根部の表面はセメント質が覆っています。

(3)舌

舌(Tongue)は、味覚と咀嚼、発声の助けを行う器官で口腔底にあります。舌の先から舌 尖(Tip)、舌体(Body)、舌根(Root)と呼びます。舌は横紋筋の固まりで粘膜に覆われ、舌乳頭(有郭乳頭・葉状乳頭・茸状乳頭・糸状乳頭)があります。有郭乳頭、葉状乳頭、茸状乳 頭の粘膜上皮内には味蕾(味覚器)があり、これ以外の粘膜では神経線推により直接味を感じます。舌根部に舌扁桃があります。

3 口腔腺と唾液

(1)口腔腺(唾液腺)

口腔腺は唾液を分泌する腺で唾液腺とも言います。これには①小口腔腺と②大口腔腺(三 大唾液腺)があります。

①小口腔腺は、口腔の粘膜下にある小さい腺で、口唇腺・頰腺・口蓋腺・舌腺などがあ ります。
②大口腔腺(大唾液腺)は、唾液腺とも呼ばれ、(i)耳下腺、(ii)顎下腺、(iii)舌下腺が あります。ここから分泌される唾液は排泄管(導管)によって口腔内に運ばれます

(i)    耳下腺は、耳介の前下方にある最大の唾液腺で導管は口腔前庭の耳下腺乳頭に開口(頼の内面で上の第2大臼歯対向面)し、漿液性の唾液を分泌します。
(ii)   顎下腺は、顎下三角の内側にあり、導管は舌下小丘に開口(舌下部)し、粘液と漿液の混合性唾液を分泌します。
(iii)  舌下腺は、口腔底(舌下部)の粘膜下にあり、導管は舌下小丘、舌下ヒダに開口(舌下部)し、混合性唾液を分泌します。

(2)唾液

唾液(Sakuvary)は、唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)から分泌され、1日におよそ1,000 ~2,000ml分泌されます。唾液は、ほぼ中性で水分が99.5%、残りが粘液と消化酵素(プ チアリン)です。唾液は消化酵素によって、でん粉を麦芽糖(マルトース)に分解するほか口腔内をしめらせ発声をよくし、食物をしめらせ咀嚼や嚥下しやすくしたり、味覚を生じさせたりします。また、白血球も含まれ異物(細菌など)を貪食するので殺菌作用もあります。副交感神経の興奮は薄い唾液を多量に分泌し、交感神経の興奮は粘性の唾液を少量分泌します。

4 咽頭と食道

(1)咽頭

咽頭iEha中は、筋肉でできた管状の構造で粘膜が内面を覆っています。口腔および喉 頭の後ろにあり、消化管と気道の交差部をなしていて、呼吸器系と消化器系の一部として 機能しています。咽頭の下は第6頸椎の前で食道につづき、上壁の粘膜にリンパ小節が密 集し、咽頭扁桃、耳管扁桃があります。

咽頭の口部の周囲を口蓋扁桃・舌扁桃・咽頭扁桃・耳管扁桃が取り囲んでいて、これをワルダイエルの咽頭輪と言います。また、解剖学的には咽頭は、鼻咽頭・口部咽頭・喉頭部咽頭に分けられます。

(2)食道

食道(Esophagus)は、粘膜で覆われた筋肉の管で、咽頭と胃を結んでいます。食道壁の蠕動によって食物を胃に送る作用をします。その長さは約25cmで、第6頸椎の高さで咽頭 につづいて始まり、気管、心臓の後ろを下って横隔膜を貫き、第11胸椎の左前で胃の噴門 に連なっています。

食道は、その起始部、気管分岐部、横隔膜貫通部の3か所で狭くなっていて、癌の好発 部位でもあります。食道の壁は、粘膜、筋層、外膜の3層からできていて、筋層は上1/3 が骨格筋、中1/3が骨格筋と平滑筋が混在、下1/3が平滑筋で構成されています。

5 胃

胃胃(Stomach)は袋状の器官で、横隔膜の直下、腹腔の上部に位置し、第1腰椎の前で十二指腸に続いています。胃の入口を噴門、出口を幽門と言い、噴門の左上方を胃底、中央部を胃体、上縁を小彎、下線を大彎と言います。幽門には幽門弁(幽門括約筋)があり、幽門括約筋に急に刺激(冷たい物を飲んだりする)を与えると、収縮して胃痛を起こすことがあります。

胃壁は、粘膜・筋層・漿膜の3層からできています。粘膜の胃腺から強い酸性(pHL〇〜1.5)の胃液が1日!,500~3,000ml/分泌されます。胃腺の主細胞からペプシノーゲン、旁細胞から塩酸、副細胞 から粘液が分泌され、噴門腺、幽門腺から粘液が分泌され胃粘膜を保護しています。

(4)胃の消化作用

胃の消化は、蠕動運動(機械的消化)と消化酵素(化学的消化)によって行われます。
機械的消化とは蠕動運動によって食物を胃液と攪拌混和させ粥状とすることで、化学的 消化とは胃液中のペプシンはたん白質をペプトンに分解することです。

6 小腸

(1)小腸

小腸(Small intestine)は長さ6〜7mの管状の器官で、上から①十二指腸、②空腸、③回 腸の順に分かれ、大腸に通じています。

①十二指腸

十二指腸 十二指腸(Duodenum)は長さ約25cmで、第1腰椎の右前で胃の幽門に続き、腹膜の後ろ膵臓頭部の回りでC字形に彎曲し、第2腰椎の左で空陽に移行しています。ここはしばしば潰瘍が起こる場所でもあります。十二指腸の上から1/3のところに膵臓からの消化液と肝臓からの胆汁が注ぎ込む管の出口があり、大十二指腸乳頭と小十二指腸乳頭の2つの開口部があります。胆石で大十二指腸乳頭が閉鎖されると、激痛、黄疸と消化吸収障害などの症状が起こります。

②空腸

 空腸(Jejunum)は、十二指腸に続く残りの2/5の部で、おもに腹腔の左上部にあり、腸間膜を有します。

③回腸

 回腸(Ileum)は、空腸のあとの3/5の部で、おもに右下部にあり、右腸骨窩で大腸に移 行し、腸間膜を有します。その出口に回盲弁(バウヒン弁)があって、大腸の内容物が回腸に逆行するのを防いでいます。

 小腸の壁は、粘膜・筋層・漿膜の3層からつくられています。粘膜には多くの輪状のヒ ダと無数の腸絨毛があり、腸液を分泌する十二指腸腺と腸腺があります。

粘膜下にマイスネル粘膜下神経叢、筋層間にアウエルバッハ筋間神経叢があり、いずれ も自律神経系に属し腸の運動に関与しています。腸液はアルカリ性で水分のほかに消化酵 素であるアミノペプチダーゼ、サッカラーゼ、ラクターゼ、マルターゼ、リパーゼを含ん でいます。

(2)小腸の消化作用

胃から送られてきた粥状の食物は膵液と腸液に含まれる消化酵素と胆汁の協力により消 化されます。消化には胃の項で前述した機械的消化と化学的消化があります。

機械的消化は蠕動運動・分節運動・振子運動によって食物を消化液とよく混和して下方 に送る働きをします。化学的消化は腸液のアミノペプチダーゼがペプチドをアミノ酸に、 サッカラーゼは蔗糖をブドウ糖に、マルターゼは麦芽糖をブドウ糖に、ラクターゼは乳糖 をブドウ糖に、リパーゼは脂肪を脂肪酸とグリセリンにそれぞれ分解する働きをします。

7 大腸

(1)大腸

大腸(Large intestine)は消化管の最終部で小腸につづき長さ約1.5mの管で小腸より太く、長さは短くなっています。大腸は食物の通過順に、盲腸・結腸・直腸となっています。
大腸 盲腸(Cecum)は大腸の入り口の右下腹部、回腸の開口部(回盲口…回盲弁がある)の下方にあり、長さは5〜6cmです。その後内側から虫垂が下がっています。

結腸(Colon)は順に、上行結腸(腹腔の右端を上行し約20cm)、右結 腸回を通って横行結腸(胃の大彎の下を横行し約50cm),左結腸回を通って下行結腸(腹腔の左端を下行し約25cm)、S状結腸(左の腸骨窩で約45cm)となっています。

直腸(Rectum)は仙骨の前面を下り、尾骨の下端の前で肛門に開き、 長さは18~20cmです。

(2)大腸の壁

大腸の壁は粘膜、筋層、外膜および漿膜から成っています。粘膜に腸紡毛が無く、筋層 は内輪層、外縦層から成っています。盲腸および結腸では外縦層筋が3か所で発達し、3本 の結腸ヒモ(大網ヒモ・自由ヒモ・間膜ヒモ)をつくっています。上行・下行結腸の後壁は外膜で、残りは漿膜(腹膜)に覆われ、横行結腸とS状結腸は結腸間膜を持ち移動性があります。直腸は大部分が外膜に覆われ、結腸ヒモはありません。

(3)大腸の作用

大腸の分泌液のなかには消化酵素が含まれていないため消化はほとんど行われません。 大腸には腸内細菌が繁殖しており、これによる腐敗・発酵によって内容物を分解します。 また大腸では蠕動・逆蠕動の運動が行われ、その間に水分と塩類が吸収され糞塊も形成さ れます。

(4)排便

直腸が糞便によって満たされると直腸内圧が高まり(30〜50mmHg)直腸璧が伸展され、これが刺激となりインパルスが直腸壁に分布する骨盤神経を介して脊髄t大脳皮質に伝えられ便意を感じます。ひとつは仙髄の排便中枢に行き、反射的に副交感神経を通じて直腸の蠕動と内肛門括約筋の弛緩が起こります。意識的に陰部神経により外肛門括約筋をゆるめ排便が行われます。

大腸壁を通しての物質の移動は小腸より遅く、大腸を物質が通過するのに通常約3〜5 日かかります。通過速度が速いと糞便は液状になり下痢になります。逆に5日以上かかる と水分が過剰に吸収され体積を減じ固くなり便秘になります。

(5)虫垂

虫垂(Vermiform appendix)は盲腸に付着し、管状の内腔があり、回盲弁の盲腸への開口 部から約3cm下で、大腸の内壁とつながっています。虫垂の粘膜で炎症が起こると虫垂炎になります。

(6)小腸と大腸の違い

大腸には壁に3本の結腸ヒモ、結腸膨起、腹膜垂があり、小腸にはありません。小腸の 粘膜には多数の輪状ヒダと腸絨毛がありますが大腸の粘膜にはありません。

8 肝臓

(1)肝臓

肝臓 肝臓(Liver)は非常に大きく、重さが約1200g、腹腔のほぼ右上部を占め、横隔膜の直下にあります。大部分は腹膜で覆われ、暗赤褐色で、人体最大の分泌腺です。右葉(3/4)と左葉(1/4)に区別され、右葉の下面に方形葉、尾状葉管・神経・リンパ管が出入します。また下面に胆囊窩があり、胆囊ががあります。肝臓の下面中央はへこんで肝門といい、固有肝動脈・門脈・左右肝管・神経・リンパ管が出入します。また下面に胆囊窩があり、胆囊がはまっています。肝臓の表面は線維被膜で覆われ、これが内部に入りこんで小葉間結合組織(グリソン鞘)となって肝臓の実質を多数の小葉に分けています。肝小葉の中心部を中心静脈が貫き、ここから放射状に肝細胞索が並びます。

肝細胞間に類洞があり、その内に星細胞があって強い食作用を行います。また肝細胞間 に毛細胆管があり、肝細胞で作られた胆汁を運びます。中心静脈は集まり、最後に2〜3本 の肝静脈となり肝臓の後方から出て下大静脈に入ります。
肝細胞でつくられた胆汁は肝管によって運ばれます。その後、左右の肝管が合流し総肝 管となり、さらに胆囊からの胆囊管と合流し総胆管となり、十二指腸に運ばれます。

(2)肝臓の働き

肝臓は人体の化学工場のような働きをするところで、胃や腸で吸収された物質は門脈に よって肝臓に運ばれ肝細胞で処理されます。

肝臓の働きは胆汁をつくり十二指腸に分泌し脂肪の消化を助けます。またグリコーゲン の合成・貯蔵・分解を行います。すなわち血糖の多いときはグリコーゲンとして蓄え、血 液中の糖分が不足するとブドウ糖に変え血中に送ります。これはホルモンの働きによりま す。血漿たん白のアルブミン、フィブリノーゲンの生成と不要のアミノ酸は分解して尿素 をつくり、腎臓から排泄します。血液中の有毒物を分解して無毒とする解毒作用がありま す。また、古くなった赤血球を破壊する働きもします。

肝臓・小腸・大腸・胃

9 膵臓

(1)膵臓

膵臓 膵臓(Pancreas)は長さが約15cmの細長い器官で、胃の後方で後腹壁 に接し、十二指腸のCの形をした凹面に位置し、第1〜第2腰椎の高さ で横たわっている腹膜後器官です。

膵臓は実質器官で、内部は腺組織が多数の小葉に分かれます。各小葉からの導管は膵管に合流し、膵管は膵頭で総胆管と合流して大十二指腸乳頭に開口していいます。

膵臓にはランゲルハンス島と呼ばれる内分泌細胞の集団(0.lmm- 0.2mm)が散在しており、その数はおよそ100万個で特に膵尾に多く存在します。

(2)膵臓の働き

膵臓には2つの作用があります。導管(膵管)により十二指腸に分泌される膵液の消化作用と、導管がなく周囲の血液やリンパに入るホルモン(インシュリンやグルカゴン)の分泌による内分泌作用があります。

膵液は1日に1,000〜2,000ml分泌され弱アルカリ性(pH8.1~8.2)で消化液中もっとも消化力が強く、たん白質・脂質・糖質の三大栄養素を分解する酵素があります。たん白質 分解酵素(トリプシン)はたん白質をポリペプチドに、脂肪分解酵素(膵リパーゼ)は脂肪を脂肪酸とグリセリンに、でん粉分解酵素(アミロプシン)はでん粉を麦芽糖にそれぞれ分解します。

10 胆囊と胆汁

(1)胆嚢

胆囊(Gallbladder)は肝臓下面の胆囊窩にはまっているナスの形をした袋で、胆汁を一時蓄え濃縮します。その胆汁を運ぶ胆囊管は肝臓からくる総肝管と合流して総胆管となり、膵臓からの膵管と合流して十二指腸の大十二指腸乳頭に開口しています。

(2)胆汁

胆汁(Bile)は、肝臓(肝細胞)で1日約500-1,000ml生成され胆囊に蓄えられ、アルカリ性(pH8.0)で苦味を有しています。成分は水分と胆汁酸塩および胆汁色素から成っています。胆汁の作用は胆汁酸塩によって脂肪を乳化し、リパーゼ(ステァプシン)の脂肪の消化を助けます。

胆汁を運ぶ管と胆囊には胆汁の成分から石(胆石)がつくられ、この石のために総胆管が閉塞され、胆汁が十二指腸に排出されなくなり、激しい痛みを生じます。糞便は胆汁の 色素により灰白色になります。また、分泌されなかった過剰な胆汁が血液に吸収され、肌 が黄色に変色し、黄疸になります。

総肝管の閉塞でも黄疸になります。胆汁が肝臓から流出しないので、過剰な胆汁が血液 に流出するためです。

胆汁は胆囊では再吸収されないので、胆囊管が閉塞しても黄疸はおこりません。

11 消化と吸収

(1)消化と吸収

食物(栄養素)の消化は前述したように、機械的消化と化学的消化があります。食物は消化された後吸収されます。吸収は主として小腸(とくに回腸)の粘膜の腸絨毛で行われ血液とリンパ液に移動し運ばれます。しかし、アルコール、炭酸水は胃からも吸収されます。水分の大部分は大腸の粘膜で吸収されます。食物の吸収とは言い換えれば、アミノ酸・ グルコース・脂肪酸・グリセロールが腸の内腔から体内の循環液中へ移行する過程を言い ます。

(2)タンパク質

タンパク質の消化は胃で始まります。胃液の2種の酵素(レンニンとペプシン)はタンパク質分子を多少単純な化合物に分解します。腸では、膵液のトリプシンと腸液のペプチターゼという酵素によりアミノ酸に分解され消化は終了します。小腸粘膜の腸絨毛中の毛 細血管に吸収され、門脈を経て肝臓に運ばれ、血中に出され運ばれます。

(3)炭水化物

炭水化物(でん粉や糖分)は小腸に来るまでほとんど消化されません。食物が小腸に入るとブドウ糖や果糖に分解され、腸絨毛中の毛細血管に吸収さ九門脈を経て肝臓に運ばれ、 血中に出され運ばれます。

(4)脂肪

脂肪は小腸に来るまでほとんど消化されません。ほとんどの脂肪は十二指腸で胆汁によ って乳化され、その後、膵液中のリパーゼが脂肪の分子を脂肪酸とグリセロール(グリセ リン)に分解します。一部は門脈を経て肝臓に、大部分は腸絨毛中の中心乳び腔に吸収さ れ、腸リンパ本幹、乳び槽、胸管を経て静脈に入ります。

(5)無機質

無機質は水にとけて腸絨毛中の毛細血管に吸収され、門脈を経て肝臓に運ばれ血中に出 され運ばれます。ビタミンは脂溶性と水溶性があります。脂溶性ビタミン(A・D・E・K など)は腸絨毛中の中心乳び腔に吸収され、腸リンパ本幹、胸管を経て静脈に入ります。 水溶性ビタミン(B・C・L・Pなど)は腸絨毛中の毛細血管に吸収され門脈を経て肝臓に運ばれ、血中に出されます。

12 栄養と代謝

(1)栄養素

栄養素(Nutrient)は生命の保持・発育・成長および身体の活動に絶対に必要な物質で、す ベて食物より摂取します。

適切な栄養には、①タンパク質、②炭水化物、③脂肪、④無機塩類、⑤ビタミン、⑥水 を適切に摂取する必要があります。栄養素のうち体内で燃焼して活力源(エネルギー)となるものを熱量素と言い、タンパク質・炭水化物・脂肪がこれにあたります。また生体の機能を円滑にする栄養素を保全素と言い、無機塩類とビタミンがあります。

①タンパク質

 タンパク質は細胞の主成分で、身体の構成成分として重要な栄養素です。また,必要に応じエネルギー源となることもあります。1gあたりのエネルギーは4.1kca!で、1日の摂取量は約70gと言われています。

 タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されています。1種類でも欠けたら生命に必須のタンパク質が合成されず、生命が深刻な状況に陥ります。体内で作れないアミノ酸は食事で摂取する必要があり必須アミノ酸と言われています。非必須アミノ酸は体内で生成することができ食事から省くことができます。

 必須アミノ酸は、ヒスチジン・イソロイシン・ロイシン・リジン・メチオニン・フエニルアラニン・スレオニン・フォリプトファン・パリンです。
非必須アミノ酸は、アラニン・アルギニン・アスパラギン・アスパラギン酸・システィン・グルタミン・グルタミン酸・グリシン・プロリン・セリン・チロシンです。

②炭水化物

 炭水化物は糖質とも言い、体内で燃焼してエネルギー源となります。坨あたりのエネルギーは4.1kca!で、余分なものは脂肪となります。一般に1日の摂取量は約500gと言われています。

③脂肪

 脂肪は、炭水化物とともにエネルギー源として重要な栄養素です。余分な脂肪は皮下脂肪として蓄えられ、必要に応じて活用されます。1gあたりのカロリーは9.3kcalで、一般に1日の摂取量は約30gと言われています。

④無機塩類

 ミネラル(無機物)には、ナトリウム(Na)・カリウム(K)・カルシウム(Ca)・リン(P)-マグネシウム(Mg)などがあり、血液・骨・歯の成分として重要でです。また浸透圧の調整、血液を弱アルカリ性に保つなど身体の機能を円滑にする働きをします。

⑤ビタミン

 ビタミンは下記に示すような食物中に含まれ、身体の機能が円滑に行われるように調整する物質で、ビタミンが不足するとさまざまな機能障害を起こします。

 ビタミンAは脂溶性で、緑黄色野菜や乳製品など、例えば、レバー・肝油・バター・卵黄・トマト・ホウレン草などに多く含まれます。不足すると夜盲症・皮膚乾燥・鮫肌などが起こります。

 ビタミンB1は水溶性で、穀物・肉類・豆類など、例えば、ぬか・小麦・キャベツなどに含まれます。不足すると脚気・心不全・神経炎を引き起こします。
ビタミンB2は水溶性で、緑野菜・肉類・豆・乳製品など、例えば、酵母・卵黄・牛乳・野菜などに含まれます。不足するとペラグラ症(皮膚炎や知的障害)を引き起こします。

 ビタミンB12は水溶性で、肉類や乳製品になど含まれ、不足すると悪性貧血を起こします。

 ビタミンCは水溶性で、果実や緑野菜、トマト・ピーマン・ミカン・レモンなどに多く含まれ、不足すると壊血病を引き起こしたり、皮膚や骨、血管の変性を起こします。

 ビタミンDは脂溶性で、乳製品・シイタケ・卵黄・肝臓・肝油などに多く含まれ、不足するとクル病や骨の変形を起こします。日光の紫外線を受けるとビタミンDができます。

 ビタミンEは脂溶性で、野菜・豆類・小麦・卵黄などに含まれ、不足すると性細胞の発育障害と流産を起こしやすくなります。

 ビタミンKは脂溶性で、野菜や魚類などに含まれ、不足するとプロトロンビン(肝臓で生産)が不足して出血しやすくなります。

⑥水

 体の約2/3は水分であり、水は細胞の成分、血乳リンパ、組織液の成分、消化液の成分として重要です。また食物の消化・吸収、老廃物の排泄、体温調節などに水分は大切な役目を果たします。

(2)代謝

①物質代謝

 小腸壁から吸収された栄養分が血液循環により全身の細胞に送られます。細胞はこれを材料として体成分を補充し、また新しい物質をつくります。この過程を同化作用と呼びます。これと反対に細胞内に取り入れた栄養分を燃焼(酸化)してエネルギーをつくり、また不要な成分を分解して排泄する過程を異化作用と言います。同化作用が異化作用よりも盛んに行われると肥満になります。逆の場合はやせ衰えます。物質代謝とは栄養分をもとに細胞の新生や成分の補充をすることを言います。

②基礎代謝

食後12〜14時間を経て早朝空腹時に室温20°C前後のところで静かに寝かせた状態での呼吸・循環・体温保持など生命維持に必要な最小限度の代謝を基礎代謝と言います。成人の1日の基礎代謝量は、1,200〜1,400kcalです。異化作用は栄養分を燃焼してエネルギーを発生し、また、体成分を分解し排泄することです。基礎代謝は生命維持(呼吸・循環・体温)するための最小限の代謝を言います。成人の1日の基礎代謝量は1,200〜1,400kcalが一般的です。

13 腹膜

(1)腹膜

腹膜(Peritoneum)は消化器系器官をはじめとする腹腔内の諸器官を覆っている漿膜です。これを壁側腹膜と臓側腹膜に分けます。両腹膜間の間隙を腹膜腔といい、少量の腹膜液を入れて両面の摩擦と癒着を防いでいます。前腹壁内面の壁側腹膜は横隔膜の下面を覆い、折れ返り肝上面に移行します。肝上面で肝鎌状間膜となり肝表面を覆っています。

肝下面で後方からきたものと小網となり、胃の前後を覆ったのちに大彎で合して大網と なります。

大網は、空腸・回腸の前に下垂したのちに上行し、横行結腸をつつみ横行結腸間膜とし て後腹壁に固着しています。

横行結腸間膜の1枚は壁側腹膜として後腹壁を上行し、横隔膜の下面から肝の後下面に 至り小網をつくります。他の1枚は下行して腸間膜根に加わります。

腸間膜根は、下行してきた壁側腹膜と骨盤壁から上行してきた壁側腹膜とが合してます。ここから小腸間膜がのびて空腸、回腸を包み込みます。腸間膜根は、第2腰椎位から右下方に約20cmの幅で走り右仙腸関節に達します。

骨盤腔後壁の壁側腹膜は、s状結腸をつつみS状結腸間膜となります。その下方は直腸 上部前面を覆った後、男性では膀胱後上面、女性では子宮後上面に反転しています。
腹膜腔の低部をなす凹みを男性では直腸膀胱窩、女性では直腸子宮窩(ダグラス窩)と呼びます。男性では膀胱上面を覆った腹膜は恥骨結合部から前腹壁に移ります。女性では直腸子宮窩から子宮後上壁、子宮前壁へと延び、膀胱との間に膀胱子宮窩をつくります。  女性では子宮側縁から左右に向かって子宮広間膜となり、卵管、卵巣、子宮円索を包みます。

十二指腸間膜は、小網の右端部で、その内部を門脈、固有肝動脈、総胆管が走っていま す。網囊は胃と腹膜に囲まれた腹膜の袋で、網囊孔(ウィスロー孔)によって腹膜腔と交通しています。

腹膜腔内器官は、臓側腹膜に包まれた器官で、胃・空腸・回腸・盲腸・虫垂・横行結腸・S状結腸・脾臓・卵巣・卵管などです。
半腹膜腔内器官は、一部臓側腹膜を欠く器官で、肝臓・上行結腸・下行結腸・直腸・膀 胱・子宮などです。

腹膜後器官は、壁側腹膜より後ろにある器官で、十二指腸・膵臓・腎臓・副腎・尿管・ 腹大動脈・下大静脈・胸管などです。

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